購入価格 ¥80695円
□□ 購入動機 □□
同じスチールロードを20年以上愛用している。雨天もお構いなしで通勤走行を続けてきたが、何だかかわいそうになってきた。そんな矢先、wiggleを徘徊していると、油圧ディスクブレーキを採用し、フルサイズのマドガードを後付けすることも可能なフラットバー快走車cboardmanのHybrid TEAM が目に留まった。至極真っ当なトップチューブ長に、ビビッ!と来た。そして、バウチャーを使えば上記価格からさらにお買い得、である。
水色や白、黄色や赤のスチール自転車に乗ってきた自分が、まさか、こういう暗い色調で、大径でスパルタンなアルミフレーム自転車に乗ることになろうとは、つい半年前までは、想像すらしていなかった。
しかし、このHybrid TEAMにフルサイズのマドガードをつければ雨でも快適だし、ディスクブレーキだから、あのブレーキシューから放たれる暴力的な墨汁懸濁液を浴びることもない。自転車通勤は天候との駆け引きのドラマだが、マドガード+ディスクブレーキは、大げさに言えば、自転車通勤の革新である。
なお、この状態で11.0kgほど。フレームがアルミでフォークがカーボン。重量は軽くはないが、このクラスでこの装備なら、これが標準であろう。
□□ ジオメトリ検討 1 □□
Hybrid TEAMは量産車である。量産車のフレームジオメトリは所詮、出来あいでしかない。自分が重要と考える数値を満足しているかどうか?その視点は量産車選びでは欠かせない。
私の基準では、フレームジオメトリで最も重要な数値は、ホリゾンタルトップである。これが満足できる数値範囲内である場合のみ、次の検討段階に進み、ヘッド高さ、フォーク肩下、BB高さ、ホリゾンタル角度等、諸々の検討を行うことになる。ホリゾンタルトップが自分の要求にフィットしない数値であるならば、いかに優れたパーツアッセンブル、フレーム仕様、驚愕のプライスダウン品であっても、自分にとってその自転車は、最早、詮無し、である。
検討したのはHybrid TEAMのMサイズ。英国のMサイズとはいえ、ホリゾンタルトップは何と、驚愕の590mmである。一方、同社のロードバイクやシクロクロスのMサイズのホリゾンタルトップは555mmである。つまり、Hybrid TEAMはロードのジオメトリを引用して初心者向けの設計がなされているのではない、ということがわかる。
ロードとの差が35mmだが、この値は、ロードに乗る者から見ると、「これなら乗ってもいいかも?」と思わせる、かなり魅力的な設定である。
一方、国内流通のクロスバイクを眺めると、十分なホリゾンタルトップ長を持つものがなかなか見当たらないのが現状だ。これでは、フラットバーのポジションが手前すぎて窮屈この上ない。このようなジオメトリ設定は、スポーツ自転車初体験の人には、良心的なのかもしれないが。
何故、国内市場がそんなことになったのか?
日本で近年、自転車ブームが興り、フラットバーを装備した快走車に、「クロスバイク」なる奇妙な言葉があてがわれ、挙句、クロスバイクは入門者に最適、といったレッテルが貼られてしまった。疋田智氏の著作に「いますぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」なる初心者向けの本があるが、日本の700Cフラットバー軽快スポーツ車市場が、初心者向けのクロスバイク市場に、ほぼ塗りつぶされてしまっているのだ。斯くして、「そんなこと」になったのだ。これは少々、残念な状況と言えるのではないか。
一方、自転車が日々の生活に深く根ざしている英国やドイツなど欧州に目を転じれば、ロードバイクで突っ走っている人は少数派であり、フラットバーのクロモリ自転車を始め、MTB、オランダスタイルの軽快車も含め、様々な車種の非ロードバイクで走っている人が多数を占める。キャリア装備車もごく普通の存在である。様々な種類の自転車で穏やかに走ったり、一生懸命走ったりしているのだ。結局、フラットバーの自転車は初心者向け、という発想自体がないのである。その結果としての、Mサイズのホリゾンタルトップ590mm、なのだ。
前置きが長くなってしまった。
□□ ジオメトリ検討 2 □□
自分が乗る通勤ロードの場合、ホリゾンタルトップとステム突き出し量とハンドルリーチの合計は凡そ、765mmである。ロードでのブレーキブラケットの握りの位置はハンドルリーチの真上あたりになるが、この位置よりも40mmほど手前にフラットバーをセットしたい、と、ロードに乗りながら考えた。765-40 = 725mmである。
となるとHybrid TEAMのMサイズ。ホリゾンタルトップが590mm、付属するステムが100mmだが、これらの合計は690mmである。足りない。ではLサイズはどうか。この場合、ホリゾンタルトップが何と615mmもある。これはすごい。これなら100mmステムを110mmにすればちょうどよさそうだ。しかし、ヘッドチューブが25mmも長くなることを考えると、ハンドル高さの設定が多少、憂慮され、ちょっと悩ましい。
さらにwiggleで物色すると、シルバーの美しい130mmステムRitchey Classicを発見した。RitcheyといえばCBNレビュワーのichello氏である。どこか語感が似ている。一瞬、アナグラムかとも思えるが、アルファベットはかなり違う。気のせいであった。(脱線) このステムの130mmとホリゾンタルトップ590mmを足して720mmである。目標の725mmに5mmだけ足りないが、サドルを少し引き気味にするだろうと考え、Ritchey Classicを投入することで手を打つことにした。多分、うまくいくであろう。
130mmステムの投入で、少しは気の利いたシルエットを手に入れるという野望も湧いてきた。
□□ ジオメトリ検討 3 □□
ホリゾンタルトップ以外で気になるところ、と言えば、BB高さ、フォークオフセットやフォーク長さである。wiggleのcboardman購買ページには、この手の詳細な数値が掲載されていなかったので、wiggle宛、質問してみた。しかし、残念ながら、詳細数値は開示されなかった。
仕方がないのでウエブカタログに載っている長f撮影による全景画像から各部数値を類推することにした。この画像を撮影したカメラの光軸は水平で、かつホイール面に対して垂直であり、ハンドルバーの高さで、ヘッドチューブの上あたりを狙ったものと推測される。したがって、後輪がやや小さく撮られている。ウエブカタログから画像を引用してみる。
数値はほぼ解明できた。次に、類推した数値を、謎の原始ツール”ZITENSYAEXPLORER”
https://cbnanashi.net/cycle/modules/static1/index.php?content_id=32に適用して、自分のロードバイクに対してどの程度違うのか、確認してみた。ZITENSYA EXPLORERは標準的なスチールチューブを前提としたツールだが、スパルタンなHYBRID TEAMに対応させるために、ZITENSYAEXPLORERの数値設定を多少、カスタマイズして使用した。青線は自分が乗っているロード(FTB QUARK 1983 Model)、ピンク線が、Ritcheyの130mmステムを載せたcboardman HYBRID TEAMである。
スローピングが急傾斜すぎて好みではないが、この際、見なかったことにする。概ね、ポジションは出ており、問題ないと思われるが、気になる点は、フォークの長さだ。フォーククラウンを貫通しているはずの、マドガード取付用の穴が、一体、どの位置にあるのか。さらに、フォーククラウンのマスがどの程度あるのか、全く分からないので想像するしかないが、フォーククラウンとタイヤのクリアランスが、かなり大きいように見受けられる。場合によっては、マドガード取付工事が難航するということも考えられるが、現場対応で切り抜けることにしよう。
もうひとつ、気になるのが、付属の175mmクランクだ。24年ほど前、170mmから172.5mmにスイッチした時は、一週間ほどで慣れてしまった記憶があるが、14年ほど前に175mmにスイッチしようとしたときには、結局、慣れることが出来ず、172.5mmに戻してしまった経緯がある。今さら175mmに挑戦するのも面倒なのでwiggleに172.5mmクランクへの交換が可能かどうか、訊いてみたが、断られた。175mmを回してみて、ダメだったら自前で172.5mmに交換することにしよう。交換濃厚である。それにしてもMサイズで175mmクランクというあたりが、欧州車の所以か。
色々と検討した結果、購入を決めた。
□□ 自転車が到着 □□
Wiggleに発注してから半月ほどで到着した。
所謂、8分組の状態。本体と、ホイールが別箱で、中身はしっかり固定され、充填材が詰め込まれ、厳重に梱包されてきた。ホイールの段ボール箱に何故か、大きな凹みがあり、もう少しで穴が開きそうになっていたが、中身には全く影響はなかった。ここまでは完璧である。
フレームを眺めると、溶接部の滑らかさが目を惹く。地味な色調の塗装の質も素晴らしい。良く出来ている。
各部をじっくり観察すると、カーボンフォークに、微小なクラック風の影を発見した。これがクラックなのか、単なる何かのムラによる模様なのか、厚いクリア層のクラックなのか判然としなかったが、恐らくカーボン層のクラックではなかろうと判断した。画像とともに状況をwiggleに伝え、そのまま使用することにした。これを除けは、塗装の均質性はかなり良好であり、十分満足できる。
リムはRitchey製で、ディスクブレーキ対応の緩い非対称断面リムである。スポーク穴の列がリムセンターからオフセットしている。
ここで笑うほかないミスを発見した。何と、前輪のリムが左右反対に組まれていたのだ。左にディスクがあるにもかかわらず、ニップルがホイールセンターよりも左に寄っている。非対称リムを逆に使ってしまっているのだ。一瞬、目を疑った。自分が何か勘違いしているのだろうか、とすら考えた。それにしても器用な話ではある。さらに笑えるのは、このままでも何ら問題なく使えてしまう、ということだった。オチョコ量はさほど極端でもない。組みなおすのが面倒だったため、そのまま使っている。実害はないとは言え、今度は、そんなことをして平気な自分を笑う他ない。
さらに油圧ブレーキのレバー。発注時に、左前を指定することができたので、左前で発注したのだが、にもかかわらず、右前になっている。ここまで来ると、一体、担当者はどこを見て出荷検査を行っているのだろうか、である。実に微笑ましい。当然のように左右を入れ替えたが、ここで気づいた。左フォークに沿ってディスクに至る油圧配管の引き回しを考えると、この油圧ブレーキは右前がデフォルトではないのだろうか、ということに。油圧ブレーキ初体験故、つまらない勘違いをしているだけかもしれないが。
□□ パーツ交換 □□
まず、ブラックの100mmステムをRitcheyのシルバー130mmに交換した。自転車全体の印象が、さらに精悍になったような気がする。Ritcheyの美しいステム、満更でもない。
次にペダル。Wellgoの黒いアロイペダルがクリップ&ストラップ付で同梱されていたが、クランクにねじ込むことすらせず、お蔵入り。SPDクリートで回すことができるシマノのPD-M324(片面ノーマル)を取り付けた。
そしてチェンホイール。コンパクトドライブのお約束、50×34Tがセットされていた。フリーはシマノ105の11~28Tである。50×11Tなどという巨大ギヤは、凡脚の私には無用の長物でしかない。アウター50Tでは他のギヤの使い勝手も著しくスポイルされてしまう。というわけで、アウターを46Tに交換した。
他に選択肢としては、フリートップを12Tにするという手がある。46×34Tというコンビネーションの使い勝手の良さに加えて、この際、フリーも12T品に交換して46×12Tのトップにしたいところだったのだが、手を抜いた。11~28Tでは16Tが不在だが、16Tは間違いなく、あったほうがよいギヤ数である。次の機会でのトップ12T化は必須である。
さらに、マドガードを追加した。本所のマドガードを使う気満々でいたのだが、墨田区両国「いちかわ」あたりで本所マドガードを物色する時間がなく、CURANAのスタイリッシュなマドガードを通販で購入した。かなり微妙な製品なのだが、これに関してはいずれレビューしてみたい。
それにしても危惧していた事態が勃発した。フォークの長さである。長い。フォーククラウン裏からタイヤ先端までの距離が何と35mmもあった。シクロクロス車も真っ青である。当然、フォーククラウンのマドガード取付穴からタイヤまでの距離も半端ではない。仕方なく、エキステンションを導入してマドガード取付の局面を切り抜けた。こんなことでは出来上がりはヌボ~としてしまう、と想像した。ところが、意外にもスッキリ仕上がった。小容量のCURANAマドガードが、フォーククラウン裏とタイヤの丁度中間に空中浮揚している。全く、悪くない。むしろ新機軸だ。こんな設定は、TOEIスポルティーフなどでは絶対あり得ないが。
最後にハンドルバー。バー単体で602mmほどの幅であり、自分には幅が広すぎるので、ダンシング登坂でのフィーリングなどを参考にして、左右を21mmずつ金ノコで切り落とした。赤いバーエンドプラグを付けてフィニッシュ。なお、600mmを超えている時点で日本国内では道交法違反ではあるが。
□□ 組み付け上の問題点 □□
油圧ディスクブレーキはAVIDの廉価油圧ブレーキ Elixir1である。AVIDの油圧ブレーキは、ディスク当たり調整が難しい場合がある。これに関しては、ManInside氏のこのレビューが非常にわかりやすい。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=8166&forum=24HYBRID TEAMに装着されていたAVID Elixir1も例外ではなく、リア側の当たり調整は結局、完全な状態には到達しなかった。理由は単純である。HYBRID TEAMのフレームの油圧ブレーキ取付ダボの位置精度に問題がある。正しい調整手順を踏んでも、油圧ブレーキ取付ダボの位置精度が不十分であるため、ディスクに対して適正な位置にブレーキ本体を固定できないのである。では、フレームが悪いのかといえば、そうでもないのではないか。この油圧ブレーキはフレームに過剰な製造公差を要求しているように思えてならない。多分、一番の根本原因は、そこにある。パーツ側が過敏すぎるのだ。
リアブレーキから、わずかな音が聞こえるが、気にしないことにしよう、と考えていたが、いつの頃からか、気が付いたら音がしなくなっていた。
□□ 乗ってみて気づいた点 □□
~~ 変速 ~~
フロント変速機はMicroshift FD-R74-F、リアはSRAM Apexだが、前後ともまずまず。シフターのSRAM S700も手伝っているのかどうか、ロードで使っているアルテグラなどと比べると、フィーリングは野暮ったい。フロントのシフトアップは、よいしょッ、という感じであるが、十分、使えるレベルにある。フロントのシフトダウン、リアのシフトアップは、親指の爪先で押すだけ。変速系の調整は、一切、行っていないが、1500km走行時点で、ロー側3枚目のシフトアップで多少モタつくようになった程度。結局それ以上悪化せず、2100kmの現在、概ね良好である。
~~ 剛性 ~~
いかにもスパルタンな異形断面の大径アルミフレームであり、非常に硬そうに見えるが、実際には、見た目ほどの硬さではなかった。チェンステイ断面は縦長の長方形であり、この造形で、横剛性を落としている。また、FSA Gossamer Compactのクランクが多少、柔らかいかもしれない。まだ長距離を一気に走ったことはないが、少なくとも50km程度の走行では、膝に疲れが余計に溜まるといったこともない。この自転車で200kmの山岳サイクリングはちょっと遠慮したいが、多少の登坂を含む100km程度なら問題はないだろうと感じた。ただし、例えば、一日42㎞を3日続けると、飽きる。ロードは毎日乗っても相変わらず楽しいのだが。ロードと比べてしまうのは、どだい、アンフェアだが、敢えて比べてしまうと、キレや反応の良さ、爽快感が欠乏気味である。やはりアンフェアである。
当たり前だが、自分が乗っている標準チュービングのスチールロードより剛性が高い。特に、フロント周りのしっかり感を感じるが、見た目の印象も影響しているだろう。平地走行において、ロードで100rpmあたりから140rpmに向かってダッシュするような場合は、自分の好みとしてはスチールバイクのフィーリングが好きなのだが、例えばギヤ比が3程度の状態で、ゼロスタートのダッシュとなると、現代的なカーボンバイクもいいな、と感じることがある。スパルタンなHYBRID TEAMも、車重が大きい割に、低いケイデンスからの加速が何となく気楽である。適当に踏みこむだけでも、重いなりに加速するような気がする。引き脚を存分に効かせて楽しいスチールバイクとは性格を異にするが、どちらが優れている、という種類のものではない。どちらが好きか、どちらが自分のぺダリングスタイルに合っているか。ただそれだけである。
~~ 油圧ブレーキの広大なDレンジ ~~
AVIDの油圧ブレーキElixir1は指一本でフルパワーを発揮することができる。リニアリティが高く、慣れれば、まずまずのコントロール性で、楽である。フラットバーの自転車に非常によく合うのではないだろうか。強力制動が許容されるリカンベントのような車種には特に適しているだろう。
ただし、これがロードバイクのブレーキフィーリングとして好ましいかというと、少し違うような気がする。リニアリティの高さというのは、スタティックな動作の場合の話である。じわっと握った分だけ制動力は増すが、素早く握った時の制動力の立ち上がりが鈍いように、あるいは不明確に感じられるのだ。軽くではあるが素早く微妙にブレーキを当てたいとき、Elixir1の制動力の立ち上がりが、何となくモヤッ、としており、さらにどこか振動的な挙動を一瞬だが、感じる。この点では、ドライ状況であれば、シマノのキャリパ―ブレーキに軍配が上がる。なお、これはElixir1が単に、AVIDの廉価油圧ブレーキだから、ということなのかも知れない。
ディスクロータのブレーキングに供する実効半径を仮に70mm、700Cリムのブレーキ半径を310mmとしておくと、ブレーキ時に路面からタイヤに入力されるブレーキ反力から見込まれるブレーキ機構の剛性は大きく異なって見込まれる。もし仮に、ディスクロータの径がリムと同じで、ディスクとフォークが十分な剛性を持っているとすれば、タイヤ側から見込んだディスクブレーキ系の剛性は、(310/70)^2 = 19.6倍になる。(理由は省略) ディスクブレーキは、制動力は十二分だが、よほど高剛性を狙った設計を最初からしておかなければ、小さいロータで制動するというだけで、柔らかいブレーキシステムになってしまうのである。急激で微妙な制動力の立ち上がり特性において、Elixir1に若干の不満を感じるのは、これが原因ではないか、と推測している。
ちなみに、フロントブレーキをロックさせ、軽く前後に車体を強制振動させて共振させると、共振周波数が結構、低い。油圧ブレーキの剛性が原因のような気がする。素人考えだが、ハイエンドの油圧ディスクブレーキの剛性感は、ローエンドのそれとはかなり違うのではないだろうか。油圧ブレーキに詳しい方、もしくはメーカーの油圧ブレーキ設計者に見解を伺うことが出来れば幸いである。
~~ サドル ~~
フィジークのアリオネに形状が多少、似ているが、柔らかい。乗った感触はアリオネとは似ても似つかない。よく言えばコンフォートということになるかも知れない。硬めのサドルとして根強い人気を誇るCONCOR LITEと比べると、座面を同じ力で指で押し込むと、2~3倍ほど余計に凹む。なぜかこの柔らかサドル、脚の付け根のサドルに当たる辺りが痺れてきたりすることがある。悪いサドルというわけではないが、自分には柔らかすぎるのだろうか。とりあえず継続使用しているが、虎視眈々と交換タイミングを探っている。
~~ 左右非対称チェンステイ ~~
ディスクブレーキ対応ということで、左チェンステイの後端側が外に出っ張っているのだが、この造形はいただけない。シューズのかかとの内側がここに当たる人がいるはずである。特にシューズが大きめで、Qファクタが小さくなるようなクリート設定をする人が、ごく普通にぺダリングしたら、かなりの率で当たる。私は偶々、当たらないが、時々、擦っている。ここまで出っ張らせることなくディスク対応が出来るはず、というよりも、この造形に不自然さを感じる。というわけで、フレーム設計に少々、詰めの甘さを感じるところではある。
~~ 程よい乗り味 ~~
スパルタンな異形断面のアルミフレームで、武骨な印象が強く、慣れないうちは単なる硬めの自転車でしかなかったが、500kmを過ぎたあたりから、この自転車の楽しさがだんだんわかってきたような気がした。自分が乗っているロードとは別の乗り物だが、これはこれで、結構楽しい。登坂で車体を思い切り振り回したりしても面白い。見た目の印象とは異なり、想像していたよりも心地よく乗ることができた。28Cタイヤの空気圧は多少、低めの方がよさそうだ。ただし、アウターがデフォルトの50Tのままでは、非力な私がこの心地よさに気付くことはなかったかも知れない。
また、加速もまずまずだし、速度維持もロード並みに楽、という気がするのだが、しかし、日々の通勤で計測している時間を見ると、ロード並みというのは気のせいだと気付く。ロードとHYBRID TEAMの最近のそれぞれ50個のデータで比較すると、ロードに対してHYBRID TEAM の方が5%程度、余計に時間がかかっている。当然ではあるが、ロードのようには走れないということであるが、体感は、それとは別の場合もある、ということを実感した。
ところで、ホイールベースが1029mmもあるが、これに慣れるのに少し時間がかかった。普段はサイズの割にショートホイールベースのロードや小径車に乗っているのだが、これらとはステアリング挙動が違うのだ。ステアリングジオメトリに際立った違いはないが、それでもちょっとした微小ステアリング時の挙動に差を感じた。フロントジオメトリがヘッド73度+フォークオフセット45mmと、比較的ニュートラルだが、旋回で、わずかにアンダーを感じてしまう。ホイールベースが大きいと、同じ操舵角でも旋回半径は大きくなるのだが、プラス50mmつまり+5%のホイールベース差によるフィーリングの差は、数字以上に大きかったようだ。だが、2100kmを走行した現在では、すっかり自分の体が咀嚼してしまった。
□□ その他 □□
~~ 重量 ~~
軽くはない。マドガード付の画像の状態で11kgちょうどである。加えてタイヤやリムが結構な重量である。これら回転部の重量は、巡航時にはそのままの重量でしかないが、加速時には新たに慣性重量としての側面が現れれる。タイヤが500グラムだが、ハブ軸周りの慣性モーメントから、加速時に現れる等価重量に換算すれば0.92倍程度で460グラム。チューブ100グラムも同じく0.92倍程度で92グラム。550グラムのリムは0.81倍程度を見込んで、446グラム。これらが前後にあるので、合計で約2㎏が、加速時に負荷として新たに出現し、等価重量は13kgになる。(※詳しい導出手順は省略) なお、ハブの慣性モーメントは小さいので無視、スポークは面倒なので無視している。
言ってみれば、秤で計測される11kgは巡航重量、13kgは加速重量であり、その差が2㎏もある、ということである。一方、自分が乗っているロードの場合、差は1.2㎏程度で済んでいる。普段は重量などには全くの無頓着で、軽量化には興味のない自分であるが、それにしてもなぁ~、と、加速するときに差分の2kgを思い出す今日この頃である。
~~ 175mmクランク ~~
14年ほど前に諦めた175mmクランクだが、一体何が起きたのか、意外にも呆気なく回すことができた。この14年でぺダリングが変わってしまったのだろうか。事態が呑み込めない。この自転車故の結果なのか。かつてダメだった175mmで使っていたガチガチ固定のLOOK黒クリートではなく、左右に振ることができるSPDクリートだからなのか。不思議である。いずれにしてもクランクを交換せずに済んだことは、貧乏性の私にとって、大きい。
~~ 油圧ディスクブレーキ+フルサイズマドガード ~~
この組み合わせは、雨天走行の決定版ではないだろうか。キャリパ―ブレーキの墨汁懸濁液の飛散には手を焼くが、あの事態から解放されるだけでも気分爽快である。ディスクブレーキの制動力は雨天でもほとんど劣化しない。これは大きなアドバンテージだ。そしてフルサイズのマドガードが付いているというのは、実によろしい。実は、着脱自在のマドフラップも自作して装備している。至福である。
□□ まとめ □□
マドガード+油圧ディスクブレーキのフラットバー快走車を手に入れるのであれば、ハンドメイドという選択肢がある。例えば、百戦錬磨の名工、細山正一氏に依頼すれば、少々、納期が嵩むが、望み通りの自転車を実現してくれることであろう。
一方でcboardman HYBRID TEAMだ。これは、フラットバー車両向けの専用設計がなされており、ロードに乗りつづけてきた人が乗ったとしても違和感が少ないという、極めて優れた特徴を持つ。日本国内で展開されているクロスバイクにはほとんど見られないジオメトリを持つ自転車であり、クロスバイクという言葉を当てはめることには違和感を感じる。この自転車は高いコストパフォーマンスを備えた、優れたフラットバー軽快スポーツ車であり、乗り味もなかなかよろしい。
HYBRID TEAMとハンドメイド。どちらもよい選択だが、予算と時間、デザインの好みを勘案し、どちらかを選択すればよいだろう。サイズが合えば、HYBRID TEAMという選択に裏切られることはないように思う。なかなか良い買い物をした、という実感が、徐々に大きくなる今日この頃である。
※説明の必要も無いかと思うが、cboardmanという名称は、トラック競技やツールなどで数々の伝説を創り上げた1990年代を代表する英国のスピードマン、Chris Boardmanに由来する。
※なお、どうでもいいことだが今レビューでは、毅然とした表現を心がけた(笑)。
価格評価→★★★★★
評 価→★★★★☆(マドガード追加で4★)
年 式→2012