購入価格 ¥7200
キャットアイのDC-DCコンバータ内蔵白色LED一発ライト。その全貌はstrikerさんのレビューで縦横に語りつくされている通りです。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=8990&forum=89#forumpost15426で、私が購入したのは、単三タイプのNiMHバッテリ4本と充電器が付いているものです。防水ゴムキャップで守られた充電端子が本体下側についているのですが、これに充電プラグを差し込んで、中のNiMHバッテリに充電します。今年の2月末に購入したのですが、充電電池を入れるときに一度開けただけで、そのあとは一度も開けていません。電池の入れ替えが少し大変だなあ、というかすかな記憶がありますが、結局、バッテリを取り出さずにそのまま充電できるというのは、便利だ!と思いました。
あっ、ところで何となくwiggleで買ったら、その充電器の交流電源プラグが、ま、まっ、まさかの!英式でした。英式しかないそうです(少なくとも当時は)。英日変換プラグを購入するのも面倒なので、手持ちの家電廃品から100V用をはぎ取って対応しました。
このEL540、それまで使っていた樽型の510や520と比べて大きいなあ、と思ったのですが、スッキリしたデザイン故か、使っている最中にデカさはそれほど感じません。放物面の焦点に配置されたLEDの光は前面のカットレンズでクルマのヘッドランプ配光のように辺縁が鋭く切れ落ち、四角い配光範囲にうまく集めています。向きを適切に設定すれば、歩道の歩行者に眩しい思いをさせずに、比較的遠くまで照射することが出来そうです。配光精度を上げるためには、光の開口面積をある程度大きくする必要があるので、このライトの大きさはまあ、仕方がないかな、とも思います。
ま、しかし、鋭く切れ落ちる配光は、ちょっと横に狭すぎかもしれません。普通の道では何の問題もないのですが、真っ暗で狭い山道に行くと、連続する急カーブで曲がる先がよく見えず、難儀してしまいます。購入時に、横長配光品と標準品の選択ができるといいですね。ちなみにこの配光で懐中電灯として使うのはキツイ。
光の強さはHiとLoがありますが、真っ暗な田舎道でも通常はLoで十分(というかHiで使ったことが無い)。通勤で毎日、20分から1時間半ほど点灯させていますが、付属の2200mAh容量のNiMH単三バッテリ4本を満充電して、電池切れ手前で光る赤ランプの点灯まで使ったのが、これまで5回。赤ランプ点灯までのランタイムを5本の棒グラフで示します。
平均すると、13時間50分ほどになります。赤ランプ点灯後は、Loモードで40分ほど点灯することができる(私の買った個体の場合)ので、合計のランタイムは棒グラフ平均値に40分を足して14時間半ほどということが言えそうです。一方、カタログに謳われるLoモードの点灯時間は15時間となっていますので、結構、正直な数値がカタログに書かれているのだなあ、と思った次第。
ところで、LEDは駆動電流を調整することで光量が決まるのですが、従来の簡易回路では、抵抗を使って電流を制限していたため、この抵抗での電力損失がバカにならず、ランタイムを短くしていました。さらに、光量も最初だけエラく明るく、時間とともにダラ下がりだったというわけですが、バッテリ電圧を別の電圧に変換して、LEDに一定電流が流れるようにこの電圧値を調整する効率の良い回路のおかげで、ランタイムが伸びて、光量変動もなくなったというわけです。CATEYEさんには、もう少し早く出してほしかった、というのが本音ではありますが、なかなか良い製品を出してくれたと思います。耐久性は不明ですが、これで長く使うことができれば、それほど高い買い物でもないと思いました。
価格評価→★★★★☆(耐久性があれば、の話)
評 価→★★★★☆(横長配光品もラインアップしてほしい)
~~~ 蛇足コーナー!! ~~~
さて、付属のNiMH充電電池ですが、調べてみたらこういう放電特性でした。放電電圧が急激に低下する手前の1.2Vのところまで使用すると考え、ここまでの放電でランタイム14.5時間ということにすれば、凡そ青線のような放電特性が得られそうです。(Gold Peak Industries Limitedデータシートから引用して青部分を加筆)
14.5時間のランタイムというのは、このバッテリとしてはかなり軽い負荷の動作です。図の1100mA放電では1.1Vに達するまでに2時間弱しかかからず、1100×1.9=2100mAhしか放電できません。負荷が軽いほど実は電池容量も大きく使うことができますので、14.5時間ランタイムでは、電池仕様値の2200mAhではなく、2300mAhの容量を仮定すると、この電池は、2300/14.5=159mAをDC-DCコンバータに供給していることになります。電池一個の平均電圧は上の図から1.28V程度であり、合計の電力は1.28×0.159×4 = 0.82Wとなります。つまりLoモードではバッテリはDC-DCコンバータに0.82Wを供給していることになります。
0.82WのうちDC-DCコンバータと周辺素子で20%だけ損失すると仮定(あくまでも仮定)すると、80%がLED駆動に使われることになりますが、すると、正味0.82×0.8 = 0.656WがLEDへ供給されることになります。
で、EL540で使われているLEDですが、strikerさんの上記レビューによると、CREE XP-Gなのだそうです。LEDのスペック図を次に示します。(CREEのCLD-DS20 Rev 8Aから引用し赤青部分を加筆)
この図から、0.656Wを満足するのは232mA×2.84V付近であることがわかります。結局、LED端子に2.84Vを加えれば0.232Aを流すことができることになります。一方、バッテリは平均で1.45~1.2Vの範囲、つまり4本で5.8~4.8Vの範囲で使うので、DC-DCコンバータは、0.232AをLEDに流すために、バッテリ4本の合計電圧を2.84Vに降圧していることになります。(もし電池を並列で使っているならば昇圧ですが)
上の話では、DC-DCコンバータとそれに付随する周辺回路の効率を80%と仮定しました。一方、従来のLEDライトの多くは、抵抗のみで電流制限を行っていたのですが、それじゃ、抵抗のみで電流制限を行うと、どうなるか?
バッテリ電圧は平均値1.28Vが4本で5.12Vとします。ここからLEDの順方向降下2.84Vを差し引いた値2.28Vが、電流制限抵抗にかかる電圧となります。先ほどの検討から、LEDにはLoモードの電流として、0.232Aを供給するものとします。抵抗にかかる電圧2.28Vによって抵抗に0.232Aを流すので、
2.28/0.232 = 9.83Ω
が抵抗値になります。この抵抗Rで電流Iを制限しているというわけです。
この抵抗の消費電力は?
0.232×2.28 = 0.53W
デンキ食いすぎダ。
LEDに入るのが2.84×0.232=0.656W
結局、効率は0.656/(0.656+0.53)=55%
効率80%(ちょっと高く見積もりすぎたかな?)のDC-DCコンバータ回路による電流制限と比較すれば、あたりまえですが、ランタイムに結構な差が出ることでしょう。(なお、DC-DCコンバータの効率はコスト次第ですが、EL540に載っているものの効率がいかほどなのか、不明です)
~~~ もーすこし、蛇足 ~~~
ところでLEDに投入される電力が0.66W程度。このうちいくらかが発熱に回ります。ネットサーフィンしてみたら4月の情報で、“CREE sets new R&D white-light LED luminous-efficacy record of 254 lumens per watt”という記事が見つかったのですが、というわけでCREEは研究段階の発光効率として、今年4月時点で、254lm/Wを実現しているというものです。これはスゴい値で、一般に販売されているものはこれよりはるかに低く、並みのスペック品であればせいぜい数10~100 lm/W程度だと思われます。
もし仮に540に搭載されるCREEがR5だとすると(仮にですよ)、製品仕様によれば、350mAで全光束は139lmであり、この時の順方向電圧降下は既出のグラフから2.9Vつまり、LEDへの投入電力は0.35×2.9=1.02W というわけでWあたり137lmを絞り出しているってことになります。これは量産LEDとして結構な高効率だと思われます。あるサイトでは1個800円という高値で売りに出されていますが、たいそうな高級品ですね。(※白色LEDの先駆者である日亜化学にも同レベル製品がありますが)
というわけで、540のLoモードでは0.66Wを投入しているので、結局、Loモードの光束は90lm程度ということになります。ただし、LEDのPN接合部の温度が例えば70℃の場合、25℃の時と比べて全光束は10%程度低下することが仕様書に示されていますが、Loモードでもその程度の温度に達している可能性は十分にあります(から冷却機構は極めて重要)ので、90lmから割り引いて80lm程度の全光束で光っていることになりそうです。
Loモードは80lm程度でこの明るさか。ずいぶん明るいんだなあ。。。
加えてCREEの研究段階の効率が数年後には実現してしまうだろう、と、楽観的に考えると、LEDは、
★★★同じ投入電力であと倍程度は明るくなる★★★
のではないか?と思いました。