好敵手(と書いてライバルと読む)
価格 プライスレス
スラムのコンポじゃなくて人のほうのライバルです。自転車乗りで競技をやっている人で意外と心からライバルと思える奴がいるって人は案外いないのではないでしょうか?しかしライバルがいると自転車に乗ることが凄く楽しくなります。なのでちょっと編ですがレビューを 私のライバルは体つきは中肉中背、脚質はヒルクライマー寄りのオールラウンダーです。性格はちょっと嫌みったらしいところはあるけども自転車乗りとしての実力は確かで県のロード選手権で入賞するほど、更に練習姿勢もストイックで一人黙々と走り続ける。そんな男です。
私はこの男のおかげで速くなったといっても変わりありません。少し嫌みったらしい性格なのであんまり好きな人ではありませんでした。なので普段は距離を置いてうまく接していましたが、自分が実力を多少つけると競技者としてぶつかり合いました。互いの能力はほぼ互角。分かれる部分は、私はヒルクライマーかつTTスペシャリストのような脚質だったので私は50kmくらいまでが勝負どころ、逆にライバルは長距離にも非常に強かった。彼と最もぶつかったのはある山で行われた山岳TT(といってもロードレースのように皆一斉にスタートします)レースでした。 私はこのレースは得意なので当然優勝を狙っていきました。このレースの2週間後には逆に300kmの超耐久レースがあるため私は彼はそちらに焦点を絞ると思っていました。しかし彼はこのレースも狙ってきました。 レースの数週間前の練習中にする、レースでは互いに一歩も引かない争いを続け、協力する気など一切なし。どちらが1分1秒でも長く前に出るか、どちらが1分1秒でも速くゴールするか。そんな野蛮な練習を繰り返しTT当日を迎えました。 私は黙々とウォームアップをしていました。ライバルもまたウォームアップをしています。互いに言葉を交わすことはありません。 スタートしてからも互いに協力することはありませんでした。ただ他の人とトレインを組んでいるのでお互いにただそのトレインのローテーションに加わりあくまでトレインに協力するような形でした。しかし山岳コースなので後半は皆千切れ、私とライバルだけになりました。ここで私は作戦に出ました。それは相手の前を走るということです。私はそのコースを何度も下見し、頭に叩き込んでいました。そのためラストスパートをかけるタイミングをミスしたくなかったから、そして相手は黙々とストイックに走るタイプなので無用なアタックは仕掛けないと踏んだからです。結果として作戦は的中。ゴール500m前から水を一気に飲んで、ボトルを投げ捨てるとすばやくアタック。オールアウトになるつもりでアタックを仕掛け、ライバルはそれに反応しきれず、約40秒の差をつけ勝つことが出来ました。ゴール後は倒れてしまったためあまり覚えていませんが彼はかなり悔しそうな顔をしながらゴールに来たと友人から聞きました。それと同時に実力は均衡していたが頭脳で負けたことも非常に悔しがっていたそうです。 それの仕返しをされたのは次の年の同じレースそのレースでは私は負けてしまいました。言い訳にするつもりは無いのですが体調が優れなかった(前日風邪を引いていた)ため、ライバルとは争うことも無く負けました。私はそれが非常に悔しく、仲間に社会人になってもこのレースには必ず戻ってくると、そして次は勝つと宣言しました。 その後です。私と彼が大学を卒業し、色紙をもらった際に彼からのメッセージが書かれていました。 「俺はまだお前に勝ったつもりは無い。次のTTでは体調治して準備して来い」 その瞬間、私は感極まり涙が出そうになりました。彼とはあまり言葉を交わしませんでしたが不思議と私は彼をライバルと思い、そして彼もまた私をライバルと思い理解しあっていたのです。それと同時に体中の血が沸騰し魂が燃える衝動に駆られました。社会人になっても当然レースには戻ってくる、そして勝つという宣言をしていましたがそれを狙っている奴がもう一人いる。負けるわけにはいかない。そう思いました。 彼がいることで私は自転車に乗りそして誰よりも速く何より彼より速く走ろうと情熱を燃やせます。所詮アマチュアレベルですがアマチュアでもライバルがいるだけで自分はまるでツールの優勝争いをする選手の一人のような錯覚を覚え、練習に励むことが出来ます。なかなかライバルを作るということは出来ませんが、いると非常に助かる、でもすごく邪魔な存在であなたの練習の励みになるでしょう。 価格評価→ 評価不能 評 価→★★★★★(私が持つ宝物のひとつです。彼がいるから速くなれる、速くなろうと思う)
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