購入価格 ¥10000(前後セット・タキザワの夏のセールでした)
馬鹿野郎!さっきから黙って聞いていれば、グリップがどうだの、雨天で滑るのがどうだの、理屈ばっかりこねやがって・・・お前らはそれでいいのか?お前らがロードタイヤに求めているのはそんなことなのか!?CB名無しでまでそんなことを言っているようじゃ、お前らはロードバイクに乗る資格はない!!ここのところの暑さにPCがやられて、ネットをしない日々を過ごしている間に、ふぬけたふいんきが充満してしまったようだな。どうやら俺がロードタイヤの何たるかを語らなければならないようだな・・・
あれは2009年の12月27日のことだ。身長170cm、体重59km、チェスト91cm、ウエスト73cmの自称クライマーの俺は、今年一年間の走り納めとして、薄く雪化粧をしたいつもの峠に上っていた。フレームはアンカーRNC7、ホイールはShimano Dura-Ace WH-7850-C24-CL 、前タイヤはミシュランPRO2RACE。。よく走るコースは距離80km、うち距離7.26km、標高530mの峠を含む。比較的滑らかな舗装で、オフロードには入らない。タイヤまわりの手入れと言えば、2、3回(厳密に決めてない、距離にして100~200kmごと、でも汚れてなければもっと拭かないし、汚れていればすぐに拭く)走るごとに濡らしたペーパータオルでリム清掃も兼ねてゴシゴシ。室内保管。そんなところである。
まずまずのタイムで登頂し、あたたかいコーヒーをすすりながら休憩していると、愛車の異変に気が付いた。なんと、いつの間にかリアタイヤがぺったんこになっているのである。走り納めで。雪の降る山頂で。まさか・・・である。嘆いていても仕方がない。こんなこともあろうかと、サドルバッグからスペアチューブを、バックパックからスペアタイヤを取り出し、タイヤ・チューブ交換を敢行する。繰り返すが雪の降る山頂のこと、気温は0度近い。今はまだ登坂の熱が体を温めてくれているが、これもあと10分ともつまい。時間の経過は命取りである。かじかんだ手で、新品のタイヤをホイールにはめることは困難を極めるだろう。ましてや、噛み込みバーストなぞさせた日には・・・想像するだに怖ろしい。スピーディに、かつノーミスでの成功が要求される。俺は気持ちを引き締めながら、まずはリアのタイヤを素手で外した。これは簡単。問題はここからだ。まずはタイヤのロゴが、バルブに対して左右対称に見えるように配置する。
デヤァァァーーー!
俺の握力60kgの右手がうなりをあげて、片側のビードをリムに落とし込んでいく。片側のビードが全周はまったら、タイヤの中にチューブを滑り込ませる。そしていよいよ反対側のビードである。バルブ側から始め、両側バランスよくはめてゆく。新品のタイヤはこれが固い。最後の10cmほどを残して、どうにも手の力だけでははまらなくなってくる。ふっ、並みの自転車乗りならここで諦めてタイヤレバーに手を伸ばすところだろうな・・・
ヌオォォォォーーーーー!!
俺はふたたびバルブ側に戻り、両手で引っ張るようにしながらタイヤをコジコジしてゆく。こうすることで、ビードの余裕を、今からはめる部分にもっていくのだ。そして、本当の最後の一押しだけ、タイヤレバーの力を借りる。
パコン
と音を立てて、最後のビードがはまった。これでいいのだ。
手の暖かいうちに無事タイヤ・チューブ交換を終えた俺は、下りの途についた。雪の混じった真冬の空気が俺の頬を刺す。
ビュオォォォーーー!
新品タイヤで下り、という稀有なシチュエーションであるが、意外なほど違和感なく操ることができる。さっきまで装着していたPRO2RACEとの比較になるが、レースタイヤということで味付けが似ているのだろうか。スピード感、グリップ感では違いを感じない。よくスピードが乗り、40km/hでまわる大きなカーブ、30km/h以下に減速してまわる連続カーブ、どんな状況にも不安がない。ただ、乗り味には若干の違いを感じる。クールシュベルの方がゴム感がある。ホイールと地面の間に、あるべきゴムがある。そんな安心感がある。乗り心地は悪くないのだが、路面のギャップなどで硬いゴム球がはずむような感覚を伝えてくる。それに対してPRO2RACEは、発泡スチロール的な、薄くて軽い、少しザラッとした質感のものが、しっとりと地面に密着しているという感じだった。
イヤッホオォォォーーーウ!!
あまりにも気持ちよく走るので、雪のことを忘れていた。充分に減速せずにまわったコーナーの先に、凍結した区間があったのである。俺はあっと声を上げる間もなく転倒し、地面にたたきつけられた。滑ったせいか、体は軽傷であった。しかし、ハンドルとサドルとペダルにキズが・・・
その時、大きな黒い影が俺の周りを覆った。対向車線で作業をしていた除雪車が、突然俺にショベルいっぱいの雪をあびせてきたのだ。俺は避ける間もなく雪の中に埋まり、あわれ身動きが取れなくなった。雪の中で俺はショベルカーを運転していた老人の声を聞いた。
愚か者めが!ロードバイクで凍結した峠道に挑むとは何事だ!
ロードバイクが何故「舗道の王者」たりえたのか忘れたのか!
それは魚が陸上で息ができないのと、人間が空を飛ぶことができないのと同じなんだよ!!
遠のいてゆく意識の中、俺は亡きおじいちゃんの言葉を思い出していた。
「つよし、『みんなちがってみんないい』じゃよ」
そうなのだ。ロードバイクのタイヤは、舗装された道を軽く速く走ることにのみ特化された存在。それゆえ、非舗装路における走破性は考慮されていない。
ロードバイクで非舗装路に立ち入るということはレーパンでホテルバイキングを食すのと同じ、TPOをわきまえない愚かで無粋な行為なのである。
金子みすずは言った。「私はお空を飛べないが、小鳥は私のようにたくさんの歌は知らないよ」と。
タイヤも適材適所。非舗装路を攻めるなら、あるいは雨天のグリップや高耐久性が欲しいなら、ロードタイヤ以外の選択肢も視野に入れるべきなのである。
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価格評価→★★★☆☆(←価格改定後としても、高い)
評 価→★★★★☆(←走行性能、乗り心地ともに不満は無い)
<オプション>
年 式→2009、夏
カタログ重量→ ???g(実測重量 ???g)