文藝別冊 忌野清志郎 デビュー40周年記念号
購入価格 ¥1200円
故忌野清志郎のデビュー40周年を祝っての、写真、インタビュー、対談、関係者へのインタビュー&特別寄稿等からなるムック本。
「自転車関係ないじゃん」と思うなかれ、235ページ中7ページだけ自転車関連の大変興味深い記事がある。 それは、スポーツバイクつくばマツナガのオーナー&フレームビルダーである松永かずはる氏(オレンジ号の製作者)の特別寄稿。
この7ページのために1200円のこの本を買う自転車好きは少ないと思うので少し長めに要約&引用してみる。
・松永氏が清志郎と知り合ったのはショップ開店直後の2001年11月。共通の知人を通じてつくばでのサイクリングの案内役として。
・「第一印象は寡黙、紳士、礼儀正しさ、そしておちゃめ」
・「神出鬼没で朝店をあけるといきなり登場なんてこともよくありました」
・その後、つくばでのサイクリング以外にも沖縄、奥の細道等にも同行。
・結婚祝いに「真冬のサイクリング」という曲をプレゼントしてもらった。
・2002年9月、清志郎からバイク製作依頼の電話あり、それは「重量6kg台、しっかり走って、どこまでも乗っていけるような快適なもの、予算に糸目はつけない」というもの。ちなみに松永氏は、つくばへはサイクリングを楽しみにきているので自分から営業的な話をしたことはなかったそうだ。
・「イマワノさんが乗りたいといえばどこのバイクメーカーでも喜んで提供してくれるであろうものを敢えて買って頂けるのです。職人冥利に尽きるとても嬉しいことでした」
・10ヵ月後完成。清志郎の感想は「うん、いいね、なめらかな感じがするよ」
・2006年3月、キューバで激坂を体験した清志郎から坂での踏み出しをよくしたいということでオレンジ2号の注文。
・直後の7月、病気が発覚。オレンジ2号も製作休止。
・同年12月、治療開始後初めて自転車に乗ったという報告を受けた松永氏、「よしそれじゃここは景気付けにイマワノさんにはサプライズでフレームを製作して快気祝いのプレゼントにしようと決めて急遽製作を開始」
・カラーリングは清志郎の「病気で体力の落ちてしまった今の自分は、体力があった時を熟したオレンジとすると熟す前のグリーン、早く体力を戻して熟したオレンジになる」というイメージで選んだミントグリーンに決定。
・「2007年2月、できあがったオレンジ2号に“快気祝い”の熨斗をつけてご自宅にお届けに行きました。(中略)新しい自転車を見て顔をほころばすイマワノさんをみて本当に良かったと心からしみじみ思いました」
自転車が介在しなければたぶん交わらなかったであろう二人の人生。 その素晴らしい信頼関係に心が洗われるような清々しさを感じつつ切なさが胸にこみあげてくる。
以前清志郎が言った「自転車はブルースだ」という言葉にはいったいどんな想いが込められていたのだろう。
価格評価→★★★★★本としては妥当 評 価→★★★★★貴重なお話。ただし自転車関連本としては★ゼロです。
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