購入価格¥400+送料¥340(アマゾンで中古の単行本を購入)
ここでの評価が高いので、古本を探して読んでみました。
自分が買ったのは、文庫版でなく単行本ですが、レビューを分けるのもなんなので、
ここでレビューさせてもらいます。
購入前は、正直あまり期待していませんでした。
自転車乗りが自転車小説を読んだので、評価が高いのだろうと。
でも、読んでみると考えは一変します。
「何これ?面白い!」
確かに面白いんですよ、…中盤まではね。
前半で本州縦断レースは京都あたりまで進みます。
ここで、ちょっと不安になります。あれ?ゴールは青森だよね?このペースで終わるのかな?
終わるとしたら、かなり急がないとダメだよね。大丈夫かな?
この不安は自分が想像したのとは別の形で的中します。
ネタバレになるので、詳しくは言えませんが、読んだ人はなんのことかわかるでしょう。
で、そのことが、この小説の価値を大きく引き下げているように思います。
正直言って、残り1/4の時点で読むのをやめようかと思いました。
それと、後半は誰々は実はXXだった!みたいなのの繰り返しで、ちょっと辟易します。
軍もなんでもありの(作者にとって)都合のよい機関になってしまい、なんだかな~という感じです。
軍は、レースを実用自転車レースにするだけの役でいいと思うんですけどね。
(実用車レースにしたアイディアは評価します。実用車にしたことで、参加者の幅が広がりますしね)
前半は本当に面白いんですよ。
たぶん、読んだ人の10人に9人は実写(映画)で見たいと思うことでしょう。
自分も、実写にした場合の役者などを思い浮かべながら楽しく読むことができました。
(でも、実写化は、ロケやセット、CG、多数の役者へのギャラなどでお金がかかりすぎて無理でしょうね)
前半では登場人物も魅力的に感じるんですが、後半においては、その使われ方が間違ってると思われる人が多く
その魅力も半減してしまいます。
越前屋はただの道化役で十分だし、千洋も普通のキャンペーンガールで十分でしょう。ふたりに変な過去を持たせる必要もないし、読んでる方もスッキリすると思います。第一、二人の過去は物語に大きな影響を与えていませんし、追われる身の越前屋がレースに出ること自体、不自然です。
そんなことなら、望月を準主役として、もっと大きく扱った方が読者の満足感は大きいと思います。
また、後半で、山川の過去や、レースをやろうとした背景が明らかになるかと思いきや、後半では山川の存在感は小さくなり、ただの大会委員長に堕しています。
主役の響木ですが、後半で過去が明らかになってきますが、フランス時代の自転車の経歴はなんだかぁという感じです。
素人がそんなに簡単にツールに出れるわけもありませんし、そんなことなら、謎は謎のままで残しておいた方がよかったような気がします。
その他、前半で活躍した選手たちが、様々な理由でレースから離脱してしまうのは、読者としては欲求不満がたまります。
こちらとしては、ゴールまでガチのレースが見たかったんですが…
ドイツチームも軍との絡みで何かあるのな?と期待していましたが、そちら方面では何もなかったので、ちょっと肩すかしを喰らった気分です。
それと、前半でポイント制によるタイム差を詳しく説明してますが、後半では、ほとんどなかったかのようになっていますね。
作者は、自転車のメカニズムについて詳しくないんでしょうか?
トゥストラップを締めるのが上り坂の前だったり、チェーンが切れたくらいで、自転車に問題があるかのような描写が気になりました(それって、自転車じゃなくてチェーンが悪いんじゃ?)。
で、フォークの破損やフレームの破断の話は一切なし。自転車に問題があることを書きたければ、そっちの話を書くべきでしょう。
また、実用車なんで、車体の重さとか、それに伴うコーナリングやブレーキの効きの悪さとか、色々書くことがあると思うんですけど、
そういう描写はほとんどないのが、自転車乗りとしてはちょっと不満でした。
一言で言うと、この小説はレース小説としては中途半端です。自転車に乗っている人がレース小説を期待して読むと、期待を大きく裏切られることになるでしょう。
2004年の、「このミステリーがすごい!」国内編の第5位だそうですが、ミステリーとしても高い点を付けることはできません。ミステリーとしては星2つくらいでしょうか。ミステリーファンの中には、こんなのミステリーじゃねえと言う人もいるかと思います。
初出は地方新聞の連載小説ということですが、なんらかの大人の事情で後半がはしょられたのかも知れません。前半と後半の落差を見るにつけ、そう思わずにはいられません。
最後に終章がありますが、これこそ蛇足以外のなにものでもないでしょう。こんなの書くくらいなら、本編でバシッと決めて欲しかった。
百歩譲って、終章の内容がそれなりに満足いくものなら良いのですが、戦争で登場人物が多く死んだりと読後感はあまりよくありません。
物語(の時代)と戦争をリンクさせたい気持ちは理解しますが、少しやりすぎのような気がします。
価格評価→★★★★☆(中古価格として:ここの影響で古本の在庫が減ったのか、アマゾンの中古価格が上がっているようです)
評 価→★★★★☆(前半★★★★★、後半★★★☆☆)
<オプション>
年 式→2004年
カタログ重量→ g(実測重量578g)