購入価格: ¥13,760(税込) ※GUTS CYCLEで購入
標準価格: ¥16,394(税込)
『シェルの剛性の高さが絶妙で、ペダリングのしやすさと快適性の高さを両立。穴あきサドルなのでさらに快適』
■ Fizik ARIONE R3 OPEN REGULERとは
フィジークは2017年にスパインコンセプトEVOを発表した。脊柱の柔軟性でサドル形状を決める従来のスパインコンセプトに加え、大きさを体重とパワーで決め、サーフィス(スタイル)を個人の嗜好や痛みの出やすいところに合わせることで、数多くのラインアップからサドルを選べるようになった。今回レビューをするARIONE R3 OPEN REGULERは、スパインコンセプトEVOの以下の特徴を持つサドルだ。
形状: ARIONE
座面がフラットかつ前後に長い。脊柱の柔軟性が高く、ペダリング時に骨盤が立つライダーに対応
大きさ: REGULER
幅が小さい。体重が軽め、平地で1時間維持できる平均速度が高め、サドルにかかる力が小さめのライダー向け
サーフィス: OPEN
カットアウト部(穴)とチャンネル(溝)を備え、会陰部周辺の圧迫を回避可能
グレードはR3でレールの素材はk:ium。上位グレードのR1と同様に、シェルにカーボン強化ナイロン、カバーにマイクロテックスを採用している。従来モデルから引き続きICS クリップシステムを搭載し、サドルの後部に専用のサドルバッグやライトを取り付けられる。
OPENシリーズはフィジークとしては初の穴あきサドルにであり、剛性と耐久性を確保するためにカットアウト部の周りはカーボン繊維で強化されている。カラーはブラックとホワイトが用意されているが、ホワイトは国内限定カラーだ。
Fizik ARIONE R3 OPEN REGULER(左)、カーボン繊維で補強されたカットアウト部(右)
■ 購入のきっかけ
購入のきっかけは、2012年に購入したARIONEのへたりに気づいたからだ。ペダリングがしやすく快適性も高いので気に入っていたが、長年の使用で中央部が大きくへこみ、サドルの先端が会陰部周辺を若干圧迫するようになった。また、着座で尻が沈むからか、サドルの高さを変えたりするとしっくり来るポジションを出しにくくなった。このままでも一応使えるが、へたりが気になるので交換することにした。
私が使っていたARIONEは、現行モデルのARIONE ki:um STD for SNAKEとして販売されている。引き続きこのサドルを使うことも考えたが、穴あきサドルを一度も使ったことがなかったので、好奇心からARIONE R3 OPEN REGULERを購入した。これなら以前のARIONEの使用感と使用感が大きく変わることなく、穴あきサドルを試せると考えた。ただ、サドルの幅を決める際にはパワーと体重を考慮しておらず、以前のARIONEの幅で問題ないという理由でREGULARを選んでいる。
ARIONEのへたりに気づいたことが購入のきっかけ
■ インプレッション
ARIONE R3 OPEN REGULER(以下OPEN)の使用期間は約1年3ヶ月。主にARIONE K:ium STD for SNAKE(以下STD)と比較しながら、走行中に感じたことをレビューしたい。両者は同じARIONEだが、カットアウト部とチャンネル以外にも使用感にはいろいろと違いがある。
ARIONE R3 OPEN REGULERと比較対象のARIONE K:ium STD for SNAKE
(剛性・屈曲性・クッション性)
OPENの方がSTDよりもシェルが硬く、座り心地がカチッとしている。STDよりシェルのしなりも小さい。硬いシェルだが適度のしなりは確保されており、特にカットアウト周辺部は比較的よくしなる。WING FLEXが搭載されていないようで、横方向のしなりは小さめ。クッションの量が多めだが、クッション自体が硬いのはSTDと同様だ。両者のシェルの硬さの違いは、後述するペダリングや快適性の差として現れている。
(ペダリング)
明らかにOPENの方がペダリングがしやすい。OPENの方がシェルの剛性が高くてしなりが小さく、激しいペダリングでも尻が安定するのでパワーのロスが少ない。サドルの幅が小さく先端も細いので、サドルと脚が干渉しにくい点はSTDと同様。クッションの硬さがパワーロスに繋がりにくい点もSTDと共通する。WING FLEXの有無によるペダリングの違いは特に感じなかった。
(快適性・振動吸収性)
クッションの量や硬さはSTDとほぼ同じだが、OPENの方がシェルの剛性が高い分だけ座り心地が硬い。だが、その割には快適性が高く、シェルが適度にしなって地面からの突き上げをそれなりにいなしてくれる。シェルの素材と厚めのクッションのおかげか、小さな振動もちゃんとカットされる。STDの方がシェルが大きくしなるので快適だが、OPENの方がペダリングのしやすさと快適性のバランスが良い。言い換えれば、OPENはペダリングのロスが生じない程度にシェルを硬くしつつ、適度なしなりで快適性も確保していると感じた。
OPENの快適性をさらに高めるのが、カットアウト部とチャンネルだ。使う前はこれらの部分が会陰部周辺に食い込まないか心配だったが、実際には走行中にカットアウト部とチャンネルの存在をほとんど感じず、STDと同様に違和感なく使えた。長時間の走行ではOPENの方が会陰部周辺に圧迫感が出ないので快適。長時間の走行ではSTDを上回る快適性があると感じた。
(ポジションの取りやすさ)
STDと同様に尻を前後にずらしてポジションを変えることが可能。ポジションをずらした後でも、尻にカットアウト部とチャンネルの存在をほとんど感じない。また、STDは座面がフラットなので尻が安定する位置を把握するのに時間がかかるが、OPENはサドルの中央がへこんでいるので尻が安定する位置がわかりやすく、ポジションを元に戻す際にも尻の収まりが良い。ブラケットの先端をつかんだり下ハンを握ったりすると前傾姿勢が深くなるが、カットアウト部とチャンネルのおかげで会陰部周辺の圧迫感を逃がせる。
■ ポジションの調整
(高さ)
サドルを高くしすぎるとペダルに体重をかけにくくなるだけではなく、カットアウト部とチャンネルが会陰部周辺に食い込んで痛くなる。ある程度高くするだけなら、カットアウト部とチャンネルのおかげで前傾姿勢で会陰部周辺に圧迫感が出にくい。この点ではOPENはサドルを高くしやすいとも言える。また、サドルの高さがちょうど良くても、ある程度は会陰部周辺にカットアウト部が食い込むはずだが、サドルの高さを合わせる際にこの食い込みを考慮する必要はなさそうだ。
(角度)
サドルを下に向けると会陰部周辺の圧迫感は小さくなるが、尻がサドルの前方に滑って安定せず、その結果ペダリングもしにくくなる。サドルをほんの少し上に向ければ尻が前方に滑らず安定するが、今度は前傾姿勢で会陰部周辺に圧迫感が出やすくなる。OPENならサドルを少し上に向けてもカットアウト部とチャンネルが会陰部周辺の圧迫感を逃すことができ、同時に尻の位置も安定させることが可能。圧迫感が出にくい分だけOPENは角度の調整がしやすい。
(前後位置・後退量)
座面がフラットかつ前後に長い形状なので、サドルのどこに座ってもある程度のスムーズなペダリングは可能。サドルの前後位置の調整は、高さや角度ほどシビアではなく、高さや角度を決めた後に調整すれば良いと思う。前述したとおり、カットアウト部とチャンネルのおかげで尻が安定する位置が把握しやすいため、サドルの前後位置を決めるのにそう時間はかからない。
(先端の向き)
サドル先端のブラックのラインが中心からズレており、このラインが目に入ってサドルをまっすぐ前に向けるのに邪魔になる。実店舗で購入する場合は、ブラックのラインがズレていないことを確認した方がいいだろう。
(スパインコンセプトEVOの考慮)
サドルの形状を決める際に、少なくともスパインコンセプトEVOの骨盤の角度はだけは重視した方が良いと感じた。私は骨盤が立った状態で座るのでARIONEが最適だが、ARIONE OPENで骨盤を倒し前傾させて背中をまっすぐに伸ばして座ると、カットアウト部とチャンネルがあるにもかかわらず、会陰部周辺が強く圧迫される。骨盤を前傾させて背中をまっすぐに伸ばすライダーなら、カットアウト部が大きくチャンネルが深いALIANTE OPENの方が適していると思う。
サドルレールに目盛りが前後位置の調整に便利(左)
右にズレたブラックのラインがサドルをまっすぐ前に向ける際に邪魔になる(右)
■ 耐久性・クリーニング性
約1年3ヶ月使ったかぎりでは、シェルのへたりは特に感じない。STDよりもシェルが硬い分だけへたりに強そうだが、長期間の耐久性は今後検証したい。カバーのマイクロテックスは汚れや破れに強く、今のところは目立つ汚れやダメージはない。汚れが付いたとしても洗剤ですぐに落ちる。マイクロテックスの耐久性の高さは、フィジークの他のサドルやバーテープで経験済み。OPENのカバーも同様の耐久性が期待できる。
■ 総評
ARIONE R3 OPEN REGULERは、フィジークが満を辞してリリースした初の穴あきサドルだけあって完成度が非常に高い。特にペダリングのしやすさと快適性の高さを両立している点が素晴らしく、ARIONE K:ium STD for SNAKEから格段に進化を遂げていると感じた。特にシェルの剛性の高さが絶妙。シェルが硬いのでペダリングでのパワーのロスが少なく、適度なしなりも確保されているので地面からの突き上げをそれなりにいなしてくれる。
快適性をさらに高くするのがカットアウト部とチャンネルで、穴のないサドルと同様に違和感なく使うことができ、長時間の走行では会陰部の圧迫感を逃がせる。サドルに穴が空いているので尻の収まりが良い位置がわかりやすく、会陰部周辺にの圧迫感をあまり気にしないで済む分だけポジションの調整もしやすい。
前後に長くフラットな形状を生かし、尻を前後にズラしてポジションを変えることできるのは、ARIONE K:ium STD for SNAKEと同様。サドルの穴のクセがないので、ARIONEを使ったことがあるなら、このサドルにすんなりと移行できると思う。ただし、骨盤の角度や背中の曲がり具合によっては、会陰部周辺の圧迫感が解消されない可能性がある点には注意したい。
個人的には、初めての穴あきサドルにこれを選んだのは大当たり。ほぼすべての部分でARIONE K:ium STD for SNAKEを上回っており、これといった弱点もない。とても満足しているので、今後はよほどのことがないかぎり、他のサドルに変えることはないだろう。
シングルスピードのGIANT FIXER Rに取り付けている
価格評価→★★★★☆ (コストパフォーマンスが高い)
評 価→★★★★★ (大満足。高いレベルで性能のバランスが良い)
<オプション>
年 式→2018年
カタログ重量→221g