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レイ・ヴクサヴィッチ「俺たちは自転車を殺す」『月の部屋で会いましょう』所収
東京創元社、2014/7/11初版、本体1,900円+税
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488014537はじめに念のため申し上げておくと、この本を読んで自転車が早くなることはない。平均速度や、回転数や、出力が向上することも(たぶん)ないと思う。
本書巻末の解説によれば、ヴクサヴィッチはアメリカ・オレゴン在住の作家。本書は2001年度のフィリップ・K・ディック賞最終候補となったそうで本邦初作品集なのだが、何しろへんてこりんな短編ばかりがおさめられている。
皮膚が宇宙服になって飛び立ってしまう病気。恋人の手編みセーターの中で迷子になる男。
そして紹介する「俺たちは自転車を殺す」では、食糧不足のために生物としての自転車を待ち伏せして狩る世界が舞台だ。
(ちなみに、「狩りやすい獲物のスケートボード」は主人公の祖父の世代が乱獲したために絶滅してしまったらしい)
主人公は自転車道が森に入った直後のところで、待ち伏せしていた仲間と「雌の自転車」を仕留めることに成功する。しかし、狩が終わって引き上げるとき、主人公の彼女(ローラ)が自転車の車体部分を見下ろしている。その姿になぜかぞっとする主人公…
結末は紹介しないが、本書に所収されている他の作品と同様、なんとも切ない読後感を味わうことができる。
この感覚は例えるなら、「友人たちとサイクリングに出かけて途中の知らない山道ではぐれてしまいそろそろ夕方だが補給食と飲み物とライトの電池はあるから何とか帰れると思うんだけどでも迷子になったらどうしよう」といったところだろうか。違うか。ともかく、そんな気分を存分に味わうことができます。
価格評価→-(無料なので評価なし)
評 価→★★★★★(面白かった)