購入価格: ¥5,551 (税込)
標準価格: ¥9,180 (税込)
『Radiusよりもパッドが少ないが、ベースがよくしなるので快適性が高い。前傾姿勢にも無理なく対応できる』
■ Scoop Shallow Eliteとは
fabric Scoopサドルは、カバー、ベース、レールの3つのパーツを真空圧着して作られており、シンプルな外観、軽量化、快適性、かんたんなクリーニングを特徴としている。今回レビューをするScoop Shallow Eliteは、RadiusとFlatの中間の乗車姿勢に対応している。最下位グレードのEliteは、ナイロンベースとクロモリレールを採用。カタログ重量が266gと軽くはないが、このグレードがカラーバリエーションが最も豊富だ。どのグレードもレール以外に外観上の差はなく、幅が142mm、全長が282mmである点も同じだ。
fabric Scoop Shallow Elite(左)、ShallowはRadiusとFlatの中間の乗車姿勢に対応(右)
■ ロードバイクの前傾姿勢に対応するために購入
Scoop Shallow Eliteは、GIANT DEFY1 DISCに用いるために購入した。その前はScoop Radius Eliteを使っていた。パッドの厚みのおかげで座り心地が柔らかく、長時間の走行でも非常に快適だった。ただ、Radiusはアップライトな姿勢に対応するモデルであり、ロードバイクの前傾姿勢に対応させようとすると、サドル先端の盛り上がりが会陰部を圧迫しやすく、ポジションの調整が非常にシビアだ。
Radiusよりも座面の凹凸が小さなShallowなら、ロードバイクの前傾姿勢にも無理なく対応できると考えたのが購入の最大の理由。尻の前後の移動やペダリングのしやすさにも期待した。FlatではなくShallowを選んだのは、DEFY1 DISCはエンデュランス系ロードバイクであり、クロスバイクよりも前傾姿勢が低いが、レーシングバイクほど低くはないからだ。Radiusよりもパッドの量が少ないので、快適性の低下が不安だったが、ダメだったらRadiusに戻すつもりで試してみた。Radiusと比較しながらレビューをしてみたい。
ShallowとRadiusの比較。座面の凹凸の大きさやパッドの量が座り心地にどう影響するかがポイント
■ 外観・カラーコーディネート
エンデュランス系ロードバイクのDEFY1 DISCには、Radiusのような厚みのあるサドルが似合うと考えて手に入れたが、ハンドルの位置を低くしたらサドルの厚みが目立つようになった。Shallowに取り換えたらスマートな印象になり、外観で気になっていた部分も解決できた。DEFY1 DISCにブルーの色味がぴったりである点も満足している。ちなみに、日本の2017年モデルでブルーはラインアップされておらず、海外通販で手に入れるしかない。
Shallowの方がサドルの厚みが目立たない
■ ポジションの調整
Radiusと高さと後退量を同じにしたまま、サドル先端がほぼ水平になるようにセッティングしたところ、ほぼ一発でポジションが出た。その後、ポジションの調整の傾向をつかむために高さや角度もいじってみたが、結局は元のポジションに戻している。詳細は以下のとおりだ。
○高さ
サドルが高すぎると、ペダルに体重がかかりにくく、サドルに体重がかかりやすくなる。どちらかといえば、サドルが低い方が優しい座り心地になるが、クランクを回しにくくなる。私は座り心地とペダリングを両立するギリギリの高さを出すため、最終的に0.5mm単位で微調整を行った。ちなみに、ShallowとRadiusのレール下部から座面の中心までの厚みは同じであり、サドルの高さもほぼ変わらない。
ShallowとRadiusのレール下部から座面の中心までの厚みは同じ
○角度
前上がりが大きいとサドル後方に体重がかかり、パッドの少ないShallowはやや坐骨の圧迫感が出やすく、サドル先端が会陰部を圧迫する。逆に前下がりが大きいと尻が滑って前方に移動し、さらにパッドの沈み込みでに尻の位置が低くなる。私の場合は、サドル先端をほぼ水平にすると尻の位置が安定し、圧迫感や違和感も出ない。ただ、乗車姿勢(骨盤の角度)によって変わるため、角度のセッティングはこのかぎりではない。
サドル先端をほぼ水平かわずかに前下がりにセッティング
○後退量
これまで使用したサドルの後退量がわかっていれば、高さや角度をセッティングした後に微調整するだけで済む。極端に前後にセッティングしなければ、座り心地には特に影響しない。
○実際に座る位置
私の感覚では、サドルのやや後方に座ると、サドルの後方の沿っている部分が尻を支え、尻が座面のくぼみにフィットする。ポジションが合っていれば自ずと座る位置が決まるが、座る位置が安定しなかったり、違和感や圧迫感が出るようなら修正が必要。特に角度の微調整が重要だ。なお、尻にフィットするポジションが出ると、座面が平らであるかのような座り心地になる。
○調整の難易度
ポジションの調整の傾向はRadiusとほぼ同じだが、調整しやすいのは圧倒的にShallowの方だ。Radiusはパッドの量が多いので座面の凹凸を把握しにくく、ある程度距離を走ってパッドがつぶれないと、座面のどの部分が圧迫感の原因なのかがわかりにくい。座面の凹凸が大きいので、角度の調整もシビアだ。ある程度の硬さがあるShallowなら圧迫感の原因が座ってすぐにわかり、座面の凹凸自体も小さいので角度の調整にも苦労はしない。これなら手に入れてすぐにサイクリングを楽しめる。
■ 走行での評価
Radiusよりもパッドが少ないにもかかわらず、明らかにShallowの方が快適性が高くて驚いた。手に入れてすぐに座り心地の良さを実感したので、思いつきでロングライドを実施。パッド付きインナーパンツを下に履いていないにもかかわらず、104kmを走っても尻がまったく痛くならなかった。その他の点でもロードバイクに適した作りだと感じている。詳細は以下のとおりだ。
○クッション性
全体的にRadiusよりもパッドの量が少なく、座り心地にある程度の硬さを感じる。ただ、ロードバイクの前傾姿勢なら体重をハンドルにも分散できるので、Shallowでもパッドの量は十分であり、後述するしなりと相まって優しい座り心地になる。また、Radiusよりもパッドの量が少ない分だけ、ペダリングのロスも少ない(後述)
○しなり(屈曲性)
Radiusの方がパッドの量が多いが、体感できるベースのしなりが小さい。そのため、セッティング次第では、パッドがつぶれて硬いサドルのようになり、ベースのしなりも感じられないため、尻への圧迫感を全然軽減できないと感じることがあった。なお、体感できるしなりが小さいと表現したのは、実際にはしなっているが尻に伝わっていない可能性を考慮してのことだ。パッドの量が影響しているのかもしれない。
一方、Shallowはベースが適度にしなるおかげで、尻への圧迫感を軽減し、地面からの突き上げや振動をマイルドにしてくれる。また、体重でベースが沈み込むことで、尻が座面にフィットする。一日中座りっぱなしでも快適なのは、明らかにShallwの方だ。信号待ちのないサイクリングロードや約104kmのロングライドにおいて、パッド付きインナーパンツを履かなくても、尻に痛みどころか違和感すら出ない。
Radiusの方がパッドの量が多く、Shallowの方がよくしなる。総合的な快適性ではShallowの方が上
○尻の安定感・前後移動のしやすさ
Radiusよりも座面の凹凸が小さいが、尻の位置をサドルの一点に固定してペダリングが可能。パッドがわずかに沈み込むことも、尻の前後の位置の安定感に一役買っている。また、尻の位置を前後に動かす際に座面の凹凸が邪魔にならず、尻の位置をもとに戻す際にも座る位置を把握しやすい。つまり、Shallowは尻の安定感と前後移動のしやすさのバランスが良い。一方、Radiusは尻の位置をサドルの一点にほぼ完全に固定するタイプであり、積極的な尻の前後移動にはあまり向いていない。
○前傾姿勢の取りやすさ
Radiusよりもサドル先端の盛り上がりが小さいため、前傾姿勢を取ってもサドル先端が会陰部を圧迫しにくい。また、サドル先端の横方向の丸みも小さいため、会陰部にかかる圧迫感を面で分散できる。Shallowの方がロードバイクの前傾姿勢に対応しやすいのは想像どおりで、ドロップハンドルのどの部分を握っても尻に違和感が出ない。これならさらに前傾姿勢にも対応できると思う。一方、上体を垂直に近い状態まで立てると、パッドによる快適性が得られない可能性が高いと想像している。アップライトな姿勢ならRadiusの方が良さそうだ。
Shallowの方がサドル先端の盛り上がりが小さいので、前後移動しやすく前傾姿勢で会陰部を圧迫しにくい
○ペダリングへの影響
Shallowの方がクランクを回しやすく、高いスピードでの巡航に向いている。Radiusを使い続けると気づかないが、Shallowを使った後では、Radiusのパッドのふわふわとした座り心地が、ややペダリングのロスにつながるような気がした。なお、両者の形状によるペダリングのしやすさは変わらない。
■ 耐久性・クリーニング性
fabricのサドルのカバーには汚れに強いマイクロファイバークロスが使われており、チェーンオイルやグリスがついても洗剤でかんたんに落とせる。カバーの色がブラックなら汚れが目立ちにくいが、ホワイトを選んでもあまり汚れを気にする必要はない。私は、クロスバイクにホワイトのRadiusを使っており、ジーンズの色が移りにくく、今もきれいな状態を保っていることを確認している。これはShallowでも同じはずだ。また、カバーは尻や脚との擦れにも強く、ベースやレールにも使用感や異常は見られない。
fabricのサドルならホワイトでも汚れにくい
■ 総評
個人的には、RadiusよりもShallowの方がロードバイクの前傾姿勢に適していると感じた。Shallowの方が座面の凹凸が小さいため、尻を前後に移動しやすく、前傾姿勢でサドル先端が会陰部を圧迫しにくい。座面がフラットではないため、尻の安定感も確保されており、尻を動かした後に元の位置に戻すのもたやすい。
前傾姿勢でハンドルにも体重を分散できるなら、Shallowのパッドの量でもまったく問題はない。Shallowの方がベースのしなりが大きく、Radiusよりもパッドの量が少なくても、Shallowの方が明らかに座り心地が快適だ。パッド付きインナーパンツを履かなくても、一日中乗り続けることができる。パッドの量がペダリングを邪魔しないのもポイントが高い。
Shallowは、尻の安定感と前後移動のしやすさ、パッドの量とベースのしなり、快適性とペダリングのバランスが絶妙。座面の凹凸が大きすぎず、パッドの量も多すぎないので、ポジションの調整もたやすく、座り心地にもクセがない。最下位グレードのEliteでも満足感が高く、コスパにも大変優れており、カラーバリエーションも豊富。個人的にはオススメのサドルだ。
Scoop Shallow Eliteなら、サイクリングロードで座りっぱなしでも快適
価格評価→★★★★★ (コストパフォーマンスが非常に高い)
評 価→★★★★★ (Radiusよりも使いやすい)
<オプション>
年 式→ ー
カタログ重量→ 266g(公式サイトの244gはたぶん間違い。実測では270.5g)