購入価格: ¥8,360 (税込) ※前後セット。ヨドバシ・ドット・コムで購入
標準価格: ¥8,837 (税込)
『高い制動力を持ち、繊細かつ直感的なスピードコントロールが可能なキャリパーブレーキ』
■ BR-5700からBR-5800に交換
私が乗っているシングルスピードGIANT FIXER Rにはキャリパーブレーキが付いている。元々、テクトロのR312というブレーキが付いていたが、30km/hを超えるスピードではなかなか止まれず怖い思いをしたので、早々にシマノの105 BR-5700に交換した。どんな状況でもしっかり止まれるBR-5700はいつも安心。この先もBR-5700を使い続けるつもりでいた。
BR-5800はヨドバシのポイントを利用して手に入れた。ポイントの利用なら、BR-5700との違いを楽しむのも悪くないかなと考えた。交換した結果が変わらないならそれも良し。ブレーキ操作が変わるならラッキーくらいの気持ちで交換してみた。尚、BR-5800の使用期間は5ヶ月以上。BR-5700と比べながらレビューを書いていきたい。
写真: SHIMANO BR-5800-L
■ 互換性とケーブルの長さに注意
FIXERにはNITTO B125というピストハンドルにサードパーティ製のブレーキレバーを取り付けている。具体的な組み合わせは以下の通りだが、当然ながらシマノが推奨する互換性のある組み合わせではない。現在、BR-5800に対応するシマノ製のドロップハンドル用のブレーキレバーは販売されていない。使うならサードパーティ製のものになると思うが、その際は互換性に注意が必要だ。以下の組み合せはBR-5700の時と全く同じだ。BR-5700でも全く問題もなく使えたので、引き量の同じBR-5800でも使えると判断した。
尚、BR-5700からBR-5800に取り替える際には、ケーブルもすべて交換する必要がある。実際にBR-5800を取り付けてみたところ、ケーブルの長さが足りなかったからだ。SLR-EVのキャリパーブレーキに交換する際には、新しいケーブルを用意すればすぐ作業に取り掛かれるだろう。
図 : BR-5800と組み合わせたブレーキレバー、ケーブル、潤滑剤
写真: BR-5700よりも長いケーブルが必要
■ メカメカしい造形と美しい仕上げ
BR-5800は最近のシマノによく見られるメカメカしい造形をしている。エッジが立ったデザインがどこか近未来的だ。BR-5700よりも前後にボリュームがあり、取り付けた時の存在感は抜群。自転車がシャープな印象になり、高い視覚効果が得られる。
ただ、BR-5800のデザインはあまりにメカメカしく近未来的なので、ビンテージ風の自転車やパーツに組み合わせるのは難しいかもしれない。特にブレーキだけを交換した場合、一箇所だけシャープなデザインのパーツがあると見た目のバランスが崩れてしまいそうだ。元々、105 5800シリーズ同士の相性を考慮したデザインだが、他のパーツとの合わせ方次第では自転車の印象がガラリと変わって面白いと思う。
表面の仕上げはBR-5700と同じブラックのアルマイトだ。高級感があるとまでは言えないが美しい仕上がり。街乗り系の自転車やエントリーモデルに取り付ければ、外観がグッと引き締まるはずだ。また、BR-5800のブラックやシルバーは、様々なフレームやパーツの色に無難に合わせやすい。
BR-6800ではなくBR-5800にしたのは、FIXERに取り付けた他のパーツとの色の相性を考えてのこと。ULTEGRA 6800シリーズの濃いグレーは、セットで合わせればかっこいいが、BR-6800単体では色を合わせるのが難しいからだ。
写真(左) : BR-5700よりも前後み厚みがあるデザイン
写真(中央): BR-5700と同等の質感だが美しい
写真(右) : 取り付けたBR-5800
■ 高い制動力と容易なスピードコントロール
【素早い反応とかっちりしたブレーキタッチ】
BR-5700との差は走り出すとすぐに感じられる。BR-5800の方がブレーキレバーを引いてからの反応が早く、かっちりした剛性感のあるブレーキタッチだ。ダイレクト感と表現しても良い。これはブレーキアームの短さがかなり効いている。剛性感は重量増も貢献しているかもしれない。反応と剛性感はBR-5700と比べるとはっきりと感じられ、BR-5700がややもっさりしたフィーリングに思えてしまう。
写真: 短くなったブレーキアーム
【軽い力でブレーキを引ける】
引きの軽さはBR-5700より少し上。DIXNAのジェイリーチブレーキレバーとの相性は良好で、握力が高くない私でもブレーキ動作が苦にならず、長時間の走行でも全然手が疲れない。速度が高くなければ、ブラケットポジションから指1本でも減速できる。指2本ならどんな場面でも確実に止まれる。
ただ、引きの軽さはブレーキレバーの種類が大きく関係すると思う。特にリターンスプリングの強いブレーキレバーでは、引きが重くてBR-5800の良さを生かしきれないだろう。BR-5800を使って引きが重いなら、ブレーキレバーの種類などを見直したほうがいいかもしれない。
写真: 2ベアリングによるフリクションの軽減が効いている
【確実に止まれる高い制動力】
制動力もBR-5700より向上した。私の使用環境での体感的な制動力の向上は、シマノの説明どおりBR-5700と比べて10%程度か、10%を若干下回るくらいだ。これは劇的な変化ではないが、使えば実感できる効きの良さだ。
BR-5800くらい制動力が高いとどのような場面でも安心。高いスピードでも素早く減速でき、しっかり止まることができる。さすがにVブレーキのBR-T780ほど高い制動力はないが、短い制動距離で確実に止まるには十分すぎるほどだ。また、全然止まれないテクトロとは段違いの効きだ。
【直感的かつ繊細なスピードコントロールが可能】
BR-5800で際立つのは、スピードコントロールの容易さだ。シューがリムに当たってからのブレーキ力の立ち上がりは緩やか。ドカンといきなり効くようなピーキーな感じが全然しないので、速度の調整に神経質にならずに済む。ブレーキレバーを握ったら握った分だけ効き直感的かつ繊細なスピードコントロールが可能だ。BR-5700よりも速度調整しやすく、VブレーキのBR-T780をはるかに上回るコントロール性だ。
Vブレーキに慣れているせいか、ある程度ブレーキ力の立ち上がりに鋭さがないと効いていないような感じがするが、実際には高いスピードからも短い制動距離でしっかり止まれる。無理せず楽に止まれるという表現がふさわしい。反応の早さや引きの軽さも相まって、BR-5800は自在にスピードを操るのが楽しくなるブレーキだと思った。
写真: DIXNA ジェイリーチブレーキレバーとの組み合わせは良好。とても楽しいブレーキ操作が味わえる
■ ブレーキシューも進化
BR-5800にはR55C4というブレーキシューが使われている。これはBR-9000、BR-6800と同じものだ。BR-5700に付属していたR55C3に比べてゴムが硬めで、毛というか細い繊維状のものが多く入っているのが特徴的だ。R55C3より溝も深い。
ブレーキシューだけでは制動力の高さは判断しにくいが、R55C4より劣っていることはないと思う。そして、R55C3よりもブレーキシューの削れカスが出にくい。これはブレーキシューの硬さのおかげだと思う。ブレーキシューの耐摩耗性が向上しているだけでなく、フロントフォークやシートステーが汚れにくいのが良い。しかも、リムへの攻撃性が低く、リムの破片の突き刺さりや音鳴りが生じない。KINLIN XR-300のようなロード用のアルミリムなら問題なく使えるはずだ。
R55C4はウェット時の制動力を高めたブレーキシューとのことだが、雨天走行はしていないので、ウェット時の制動力は分からない。だが、このシューの硬さと溝の深さなら、ウェット時もそれなりに高い制動力を発揮してくれそうな気がする。
写真: R55C3より硬いR55C4。リムとの接触面に見える繊維状のものに秘密がありそうだ
■ 片効き調整しやすく、片効きもしにくい
BR-5700のセンタリング調整ネジはネジ穴を舐めやすいプラスネジだったが、BR-5800では六角穴付きボルトになった。これならネジ穴を舐めにくいだけでなく、素早くスムーズに片効き調整(センタリング調整)ができる。
また、BR-5800にしてからほとんど片効きしなくなった。これは左右対称の構造がかなり効いていると思う。しかも、フレームとブレーキの間に入れるワッシャーが、BR-5700のような平ワッシャーではなく梨地のワッシャーだ。ザラザラの摩擦がブレーキを左右に動きにくくし、片効きを防いでくれる。BR-7800のギザワッシャーを入れても、BR-5700は片効きすることがあった。片効き調整から解放されただけでも、BR-5800に変更した良かったと思える。
写真(左) : BR-5800のセンタリング調整ネジ
写真(中央): BR-5800のワッシャー。表面がザラザラになっている
写真(右) : “左右対称”デュアルピボット式キャリパーブレーキのBR-5800
■ BR-9000、BR-6800との主な違い
BR-9000、BR-6800との大きな違いは、BR-5800にはスプリング調整ボルトが付いておらず、アーチのバネ力の調整ができないことだ。スプリング調整ボルトがどの程度重要なのかは分からないが、BR-6800と迷っている人はチェックしておきたい点かもしれない。
もう一つ大きな違いが、BR-5800はタイヤ幅が28Cまで対応することだ。太いタイヤ幅に対応するBR-5800は、様々な車種に導入しやすいだろう。街乗り系の自転車に太いタイヤとBR-5800を取り付けるなんていうのも楽しそうだ。現在、FIXERには23Cを履かせているが、25Cくらいは試してみたいところだ。
BR-5800で唯一コストダウンが目に見える部分が、ブレーキシューの固定ボルトだ。BR-5800ではプラスネジになっている。頻繁に弄る部分ではないが、ここは六角穴付きボルトにして欲しかった。
写真(左) : BR-5800にはアーチのバネ力を調整する機能がない
写真(中央): MAXXIS DETONATOR FOLDABLE 700×28Cも入った。泥除けが付くがどうかはギリギリかも
写真(右) : ブレーキシューの固定ボルトがプラスネジなのが残念
■ エントリーモデルの完成車や街乗り系の自転車にもオススメのブレーキ
BR-5700からBR-5800への交換は、個人的には当たりだった。BR-5700から無理に交換する必要はないけど、交換したら交換したでとても走りが楽しくなると思う。より高くなった制動力や繊細かつ直感的なコントロールは、さすがBR-9000、BR-6800の構造を取り入れているだけのことはあるといったところ。互換性が保証されている組み合わせならもっと楽しめるだろう。センタリング調整ネジや梨地のワッシャーなどの細部にも抜かりはない。
街乗り系の自転車でも高いスピードを出すなら、BR-5800はとても良い選択になるはず。確実に止まれる上、自在なスピードコントロールが面白くなる。しかも、シルバーとブラックのカラーならフレームやパーツのカラーに合わせやすいし、28Cの太いタイヤにも対応する。
エントリーモデルの完成車や街乗り系自転車に付いているテクトロ相当のキャリパーブレーキからの交換は特におすすすめ。これらのグレードの自転車でも高いスピードは出せるので、よく効くBR-5800をつけておけば安心だ。しかも、コストパフォーマンスの高さはBR-5700以上。このブレーキを購入して、少なくとも後悔することはないはずだ。
写真: BR-5800を取り付けたGIANT FIXER R
図 : BR-5800の良い点と悪い点
価格評価→★★★★☆ (BR-5700よりも高性能になり、その分コスパが高くなった)
評 価→★★★★★ (BR-5700よりもずっと高い満足感)
<オプション>
年 式→2014年
重 量→フロント: 152g(BR-5700は136g)、リア: 164g(BR-5700は140g) ※没頭ナット抜きの重量