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自転車用のライトやサイコンで有名なキャットアイがリリースしたiPhone用のGPSサイコンサプリです。Bluetooth SMARTの機器とリンクして計測値を表示し、ログを残すことができます。当然ながら日本語表示で、さらに無料です。
ストラーダスマート(CC-RD500B)と連携してログを保存/共有するために使うのが主だとは思いますが、今回は単なるGPSサイコンとしてレビューしたいと思います。
使用環境とバージョンはiPhone5s(docomo、16GB)、iOS7.1.2、Cateye Cycling1.2.4となります。
こちらが基本画面のスクリーンショットです。最下部中央の赤いボタンを押すと計測が開始されます。
計測中はこのようになります。最下部中央が一時停止、右が計測終了のボタンです。
右にフリックすると地図と軌跡が表示されます。惜しいことに、事前に作成したルートを取り込むことはできません。それさえできれば「とりあえずはこれだけでOK」というアプリにもなり得るので残念です。
左にフリックすると標高、速度、心拍がグラフで確認できます。
計測を終了させるとログの処理画面です。アップするサイトを選んだり、あるいはログを削除したりします。
ログはCateye Atlas、Strava、TrainingPeaksに「アップロード」して保存、編集、公開などが行えます。一度アップしたログはアプリとは切り離されるため、サイト上で編集したり削除したりしても、スマフォ上のデータは元のまま残ります。
よく似た機能のアプリにStravaがありますが、Strava(アプリ)はStrava(サイト)と「同期」します。そのため片方で編集や削除を行うと、もう片方のデータも更新されます。
どちらかというと「同期」の方がいまどきっぽい仕様かもしれません。スマフォアプリでもPCブラウザでも、どちらでもクラウドの最新のデータにアクセスできます。一方「アップロード」はサイトで何をしてもオリジナルが残るという安心感があります。どちらが優れているというよりも、哲学の違いといえるでしょう。
CC-RD400DWとCateye Cyclingの計測値を比較すると、走行距離と走行時間はほぼ同じ。最高速は完全に一致しましたが、アベレージで0.5km/hほどの差異がありました。走行中に2つのサイコンを同時に見るのは難しい上に危険なので確証はないのですが、走り始めなど低速時に表示される速度に差があったように思えます。が、単なるタイムラグかもしれません。
距離と時間の差は、GPS電波の反射によるブレと、コンビニなどへの立ち寄りったのが計測されたのだと思います。
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基本画面のスクリーンショットを見ての通り、表示項目は「ただ並べただけ」です。重要さによる重み付けや見易さを考えたとは思えません。視線を落として確認するだけでも多少ストレスを感じます。慣れてしまえば表示されている場所で項目を判断できるようになるとは思いますが、慣れるまで使い続ける人がどれだけいるのか疑問です。
iPhoneアプリで可能なのかは知りませんが、ユーザーの好みに合わせて表示項目がカスタマイズできるようになれば、大幅に使いやすくなりそうです。例えば走行時間とパワーを消して、速度を縦横2倍サイズで表示する、といった具合にです。ストップウォッチや現在時刻が追加できたらさらに便利になります。
心拍とパワーについても中途半端です。計測値の表示と保存はできるのですが、いわゆるゾーンが設定できません。機器をリンクさせたら設定項目が増える……といいのですが、マニュアルに記載がないのでおそらく無理だと思われます。トレーニングはTrainingPeaksで、ということでしょうか。
# TrainingPeaksは未使用なのでよく分かりません。心拍計もパワーメーターも持ってないし。
分かる人にしか分からないサイコン専用機と違い、スマフォは価格も機能も広く知られています。そのためコンビニなどに立ち寄るときには、ホルダーから取り外して持ち歩かないとあっという間に盗まれてしまうでしょう。計測を一時停止するか、あるいは仕方のない誤差として許容する必要があります。建物に入ると電波の乱反射か何かでジグザグのログが残るので一目瞭然です。
これはiPhone側の問題なのでしょうが、登坂高度が異常に大きい値を示します。ルートラボで事前に引いたルートと比較して、10倍くらいになる事もありました。Cateye Atlasで再生速度を遅くして注視していると、SPDが0で停止状態にも関わらず、ALTが頻繁に増減しているのが確認できます。GPSで標高を計測する時のブレがそのまま記録され、積み重なって過大な差異に繋がっているのだと思います。
1 Cateye Cyclingで計測しCateye Atlasにアップロード(総距離77.03km/登坂高度1840m)
http://www.cateyeatlas.com/trip/detail/332057/2 Cateye Cyclingで計測しStravaにアップロード(距離78.9km/高度425m)
http://www.strava.com/activities/1936874243 Stravaで計測しStravaにアップロード(距離78.7km/高度442m)
http://www.strava.com/activities/1936875474 ベラチスポーツで計測しtracemyworldにアップロード(距離73.74km/上昇量565m)
http://www.tracemyworld.com/beta/t/ed-68360-forceId-tmwguest※モバイルバッテリーを繋いだ地点でログが途切れています。
5 1のgpxデータをエクスポートしてルートラボにアップロード(距離79km/獲得標高865m)
http://yahoo.jp/B5WrRv6 M241(GPSロガー)の計測データをStravaにアップロード(距離79km/獲得標高474m)
http://www.strava.com/activities/1956979967 M241(GPSロガー)の計測データをルートラボにアップロード(距離78.8km/獲得標高818m)
http://yahoo.jp/ggOTuB8 事前に引いていたルートラボ(距離72.8km/獲得標高263m)
http://yahoo.jp/RbuUDT※コースミスをしているので距離に差異があります。
こうして並べてみるとStravaにアップした「2と3と6」、ルートラボにアップした「5と7」は近いといえますが、基本的にはそれぞれ好き勝手な数値になっています。それでも1の登坂高度は、文字通り桁違いです。
体感に近い獲得標高はコースミス分を考慮しても8です。日本の自転車乗りの共通語とも言っても過言ではないルートラボの7倍近い数値はもはや笑い話といえます。
# 杉並区から横田基地まで青梅街道を往復しただけで登坂高度が2000mを越えたこともあります。
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http://www.cateyeatlas.com/trip/detail/317690/Cateye AtlasにはStravaのHidden Locations(指定したポイント周辺のログを自動で隠す機能)のようなプライバシー機能がありません。そのため自宅スタート and/or 自宅ゴールのログをそのまま公開してしまうと住所が特定され、思わぬトラブルを招く恐れがあります。そこに配慮してか、Cateye Atlasではアップロード時の公開設定が「非公開」と「フレンドのみ公開」の二種類だけで、デフォルトは「非公開」になっています。
そしてCateye CyclingにはFacebookやTwitterに「Cateye Atlasにトリップをアップロードしました」と告知する機能があるのですが、デフォルトのままでは(Cateye Atlas側で非公開になっているので)全く意味がありません。「フレンドのみ公開」に変更しても、告知が意味を持つ範囲は非常に限定されます。
# Facebookの友達 or Twitterのフォロワーで、Cateye Atlasのアカウントを持っていて、フレンドである必要がある。
Hidden Locations的な機能を追加し、アップロード時の公開設定で「無制限に公開」が選べるようになれば使いやすくなるのではないでしょうか。
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GPSサイコンとしては、無料で簡易的なものだと割り引いて考えても、痒い所に手が届いていない印象を受けます。
すべてはCC-RD500Bとの連携を前提とした仕様だと考えると、並べただけの表示項目やルート機能がないことも納得できます。CC-RD500Bは普通のサイコン並に見易くてルートは表示できないので、Cateye Cycling側で考慮する必要もないわけです。その意味で今のところ、あくまでもCC-RD500Bのためのアプリだと言えます。単体のサイコンとしてiPhoneを使いたいのなら、他にもっと優れたアプリがあるはずです。
サイコンとしてではなく、GPSロガーとして考えると、Cateye Atlasを利用できるのは魅力です。他の対応機器の中で一番安いCC-GL10でも実売は10,000円くらいなので、無料で手軽にライドのデータを保存して共有したい、という人にはお薦めできます。もっとも、そういう人は既に他のサービスを使ってる気もしますが。
登坂高度だけは早急になんとかならないかと強く思います。SPDが0ならALTの変化を無視するといった小手先の対処でも、しないよりはマシなはずです。
iPhone6とiOS8を控えた時期にリリースされたので、アップデートや動作確認にも注目です。特にiPhone6の気圧高度計で登坂高度がどうなるのかが気になります。
「スマフォと連携してログを記録して保存する」というストラーダスマートのコンセプトがCC-RD500B以降も続くのであれば、機能追加も期待できるのではないでしょうか。
iPhone5sとCateye Atlasに足を引っ張られている面もあれば、助けられている面もあり、単体での評価が難しい製品です。
Cateye Atlasのレビューも併せて読んでください。
価格評価→★★★★★
評 価→★★★☆☆