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GlennGould 2013-11-8 21:51
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【NHK BS】にっぽん縦断こころ旅
2011年2月のパイロット版「長崎の旅」から始まって、春秋春秋春、そして2013年秋、と6季にわたって放送されてきたこの番組も、今季で大きな区切りを迎えるようです。私は録画でほぼすべて、見てきました。
かつての自転車少年、俳優の火野正平氏が自転車で走ります。 イタリアのクロモリ・ロードレーサー”トマジーニ”で走ります。デローザでも、チネリでも、ましてコルナゴのマスターXでもない。トマジーニは絶妙の選択のように思えます。
しかし、この番組で自転車のうんちく話は一切出てきません。自転車の名前は「チャリオ」。ただそれだけ。いわゆる自転車が主題の番組ではないんですね。だから自転車の選択など、いちいち説明しないし、無論、メカがどうの、ウエアがどうした、という話もありません。番組を見る者が勝手に想像を巡らせるのみです。
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どこかの誰かの「こころ」にある「忘れられない場所」や「懐かしいふるさとの風景」、「こころに残る風景」が手紙にしたためられています。これを出発前に、丁寧に淡々と火野が読み上げ、相棒の「チャリオ」とともに、焦らず急がず、下りの速度も控えめに訪ねます。
火野が淡々と読む手紙の内容を聞いていると、手紙を書いた人の心情が、こちらにおぼろげながら伝わってきます。その風景は、第三者から見たらありふれた、何気ない風景かもしれないのですが、この日の自転車旅をじっくり見てみたい、と毎回、思ってしまうのでした。
旅すがら、街の人に弄られ、食堂の店主とありふれた会話をし、畑になる野菜を覗き、道端のカエルや蛇にちょっかいを出し、雨に降られ、初老の喫煙者にはきついのか、上り坂で簡単に音を上げ、バスや電車で距離を稼ぎ、時には軽トラをヒッチハイクして標高を稼ぎ、目的地に到着します。
辿りついた場所にある風景が、自分とは何のかかわりもない手紙の主の心の風景なのだなあ、と思うと、いろいろと想像し、ただ、納得するのでした。
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誰にだってある心の風景を求めて、旅をする。 火野正平が、自転車で。
最早、火野正平、余人をもって代えがたいとは、この人のことを言うんだろうな、と感じ入る今日この頃です。よくまあ、こんな粋な旅番組があったものだ、と感心するほかありません。この番組、今季でひとつの区切りとなるでしょうが、いつかまた、火野正平氏に走ってもらいたいと願わずにはいられません。
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典型的ロード自転車乗りの目線で、「カスクじゃなくてメットかぶれよ」とか、「あんな恰好でロードなんか乗れるわけねーだろ」とか、「上り坂が嫌いなら平らなところ選んで走れっての」風なことを言ってのける自転車乗りが私の周りにいますが、なんだか無粋だなあ、と思ってしまうのでした。
評 価→★★★★★
年 式→2011~
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ManInside 2014-6-2 15:46
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【NHK BS】にっぽん縦断こころ旅
俳優・火野正平が撮影スタッフとともに全国各地を自転車で走るという番組です。
上のGlennGould氏のレビューにあるように、「視聴者から寄せられた手紙」にしたためられた、視聴者にとっての「思い出の場所・忘れられない場所」を目指して走り、目的地で見晴らしの良い感じの場所を選んで火野氏がそこに腰を落ち着け、あらためてその手紙を読み上げる、というシンプルな構成(途中でごはんを食べたり、雨宿りしたり、疲れたりする様子が淡々と記録されています)。
「手紙」には時に重たい物語が隠されていることもあるものの、番組構成的にその「手紙」は火野正平を移動させるための装置として機能しているに過ぎず、番組全体が「全聾の天才作曲家の苦悩」みたいな雰囲気になることはないので、安心して見ていられます。
ただこの番組がはじまった当初、私は微妙な違和感を持ったのを覚えています。というのも、町の人に対する火野正平氏の話し方、ジェスチャーなどの身のこなしが、なんというかぶっきらぼうというか、少し乱暴というか、無愛想な感じに見えたからです(時には失礼な感じに見えることさえあった)。
しかし何度も見ているうちに、火野正平氏のそうした仕草がなんとも魅力的に思えてきました。最初の頃は、あ〜身近にこういう人がいたらやりづらいな、なんか気軽に打ち解けるのが難しそうな人だな…と思っていたのですが、たぶんこの人はすごくシャイで正直な人なのだろうと思うようになりました。
ほとんどの人は日常生活で火野正平氏のように振舞うことはできないだろうし、する必要もないと思いますが、テレビという窮屈なメディアの中でのこの自然体ぶり・自由人ぶりが眩しい。疲れた時は疲れた様子をしている。笑いたくない時は笑わない。ヘンなことを言う奴には、返事をしない。最高ですw 会社なんかではこうは行かないことがほとんどでしょう。
番組中、BGMもなく、淡々と道を走る映像と走行音が流れる時間が多い。これは最近の自転車動画でも流行中(?)らしい「RAW動画」的なタッチで、なかなか良いです。過去の再放送等を録画してローラー中などに見たりしていますが、ひょっとするとこの番組は長く続けば続くほど貴重な「日本を自転車で走ったRAW動画の集大成」になるのではないかと思ったりする。
自転車の目線で、自転車のスピードで動いていく日本の風景のアーカイブという、資料的価値が非常に高い番組になる予感がします。
そして誰が選んだのか、火野正平氏が駆るトマジーニやRin Projectのカスク、キャラダイスのサドルバッグ等、自転車や小物、ウェアなどが、決して下品にならず絶妙な趣味の良さを感じさせるものになっているところがまた素晴らしい(「玄人好み」っぽいセレクションは、それはそれでいやらしくなる懸念もあると思いますが、火野氏の自転車とウェアは個人的に趣味が良いなと思いました)。
もし火野正平氏が最先端のカーボンロード、例えばCARRERA Fibraに乗って、先鋭的なデザインのヘルメット・Catlike Whisper Plusをかぶっていたら番組のテイストは全く違ったものになっていただろうと思われます(笑)
今年の秋も放送されるとのことですが、今後もNHKのドキュメンタリーにありがちな暑苦しいド短調のストリングス音楽などは絶対につけず、このドライでRAWな雰囲気のまま番組が継続していってくれることを期待します。
私はこの番組で火野正平という俳優のファンになりました。
評 価→★★★★★
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blondeterrie 2014-12-9 12:22
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【NHK BS】にっぽん縦断こころ旅
自転車乗る方にも乗らない方にも有名になった「こころ旅」。2014年秋の旅がそろそろ終わるので、まだ続けてねという願いを込めて。
これを見始めるまで、火野正平という人がなぜ女性を虜にするのか、すごーくよくわかりました。偉ぶるところもなく、さりげなく優しいのですよ、誰に対しても何に対しても。自分の傍にああいうヒトがいたら....オトコは顔でも歳でもない....うん、転ぶな、コロッといっちゃうな、私。
番組自体も「お手紙」との適度な距離感、それでいて「お手紙」の場所と主へのさりげない優しさがにじみ出ていて、重たすぎず軽すぎずほっこりした気分になれます。
自転車乗るようになった立場としては「輪行」というと、「あ、火野正平がやってるやつね」で説明が済むことが多くなったのはよかった。
私個人は一度も「お手紙」出したことないのだけど、「私の心の風景」ど真ん中に複数個所(観光地でも何でもない場所を含め)訪ねてくれたという偶然もあり、次はどこかなと楽しみにして見ています。
最近、交通機関移動が多くなってないかなぁとは思うものの、お歳もあるので無理をせず続けてほしいと切に願っています。
評価→★★★★★(火野正平のさりげない優しさをサイクリスト諸氏も見習うと女性との関係性が向上するかも。平たく言えば今よりもっとモテるかも)
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