購入価格 $150 @ eBay
Arioneは様々なバリエーションがありますが、これはカーボンを混入したナイロンベースとカーボンレールを組み合わせたモデル。
Arioneのラインナップは複雑怪奇で、よく目にするモデルを挙げるだけでもArione Ki:um、Arione CX Ki:um、Arione CX Carbon Braided、Arione CX Carbon with Ki:um、Arione CX Carbon with Carbon Braided railsと、もう何が何だか…派生モデルが多すぎてややこしいことになってます。
CXの名を冠するモデルはパッドフォームが硬く座面も薄く仕上げられています。しかし他のArione同様前後に長いサドルであることは変わらないので、中央部分がかなり撓る作りになっています。前後に短いAntaresと比べると、ベース自体の撓りもArioneの方が大きくなっています。
サドルトップはほぼ完全にフラット、幅は細めです。横から見ると最後端に向かってエラの後ろあたりからごくわずかに反り上がっています。この反りよりも前であればどこにお尻を乗せてもペダリングできるのがこのサドル最大の特徴です。横から見るとほぼ真一文字の形状ながら、必要以上に滑る感じはありません。腿付け根がコンタクトするくびれ部分には、WingFlexという加工が施されています。これはサドルベースの樹脂部分に入れられた魚のエラのような切り込み加工のことで、これによって腿の動きに合わせてサイドが柔らかく撓るようになっています。ここから先端に向けて、断面は角の丸められた台形になっています。実際に座ると細身に感じられますが、通常のサドルよりも15~20mm程度長く作られているのが特徴。サドル先端→ステアリングコラム中心の距離でサドルの位置を出す方は、突き出し部分が長くなっていることに留意してセッティングする必要がありますね。
かなり見た目に特徴のあるサドルですが、個人的にはこれまで使ってきたサドルの中でもベストに推したいくらい相性が良いようです。何がそんなに気に入っているのかというと、後ろ半分がフラットで広く、前半部分がなだらかな台形断面で長く作られている為に骨盤を倒さなければ尿道を圧迫することなく座る位置を前方向へとずらすことが出来る点です。骨盤は出来るだけ立てて上体を寝かせ、上から下へお尻を軽く置いておくイメージで座ると、フラットで広いサドルの後ろ半分のどこかが、ちゃんと坐骨にかかる荷重を支えてくれます。そのままの姿勢を保てば前方向に数センチの範囲で移動することも出来ますから、サドルの上でチョコチョコとお尻の位置をずらす人には至極快適なサドルとなります。一方、ここに座れば腰がどっしり安定するぜ!という場所はないので、腕と上体をハンドルに対して突っ張り気味にし、さらにお尻をサドル後方に向かってに押し付けるような座り方を好む方にとってはちゃんとお尻を支えてくれない落ち着かないサドルだ、と感じられるかもしれません。さらに、骨盤を前方向に傾けて座る方は細長い突き出し部分で尿道を圧迫してしまうかもしれません。
ところで、fi'zi:kは上体の柔軟性に応じてサドルを使い分ける"Spine Concept"というものを提唱しています。
http://www.riogrande.co.jp/news/node/14793http://www.fizik.it/spineconcept/#/the-animal-in-you.htmlこれに従うと、ArioneはSnake向け、つまり背骨も骨盤も柔軟な人のためのサドルということになります。確かにArioneはフラットな座面で突き出しにも座ることを許容するタイプのサドルですから、骨盤を立てたままで背骨が描くアーチを広げたり狭めたりして着座位置を変えるにはそれなりの柔軟性が求められます。私はどうなのか? 背骨はかなり柔軟なほうですが骨盤の動きはわりと固いので、CameleonとSnakeの中間、どちらかというとCameleon(全体的に柔軟だが背骨あるいは骨盤のどちらかが相対的に固い人)寄りということになると思います。それぞれの推奨サドルであるArioneとAntaresの両方を実際に所有して使用してみたのですが、Arioneでは断続的に5~6時間座る使い方でも痛くなることはなかったものの、Antaresは3時間以内なら大丈夫ですが5時間超ともなると尿道がかなり強く圧迫され、その後2日間程は腫れが引かないという厳しい結果となりました。いろいろとセッティングを試してみたのですがついにAntaresには馴染めませんでした。Spine Concept通りならばAntaresとの相性は悪くないはずなのに、一体なにがいけなかったのでしょうか?
考えてみた結果、Antaresはサドルトップ中央が緩やかに窪んでいる形状で着座位置がほぼ一点のみとなっているのが自分には合わなかったのだと思われます。どうやら私は3時間あたりを超えると身体が徐々に疲労を覚え始め、すこしずつフォームが崩れてくるために着座位置を無意識に動かしてつじつまを合わせているようです。Antaresは比較的短いサドルで後ろが反り上がっているため、着座位置を変えようとすると前方向に傾くか硬く撓りの全くない突き出しに会陰部を乗せるしかありません。腰をしっかり立てておける時間帯ではAntaresでも問題ないのですが、突き出し部分がフラットで比較的柔らかいArioneと比べるとAntaresは幅広で硬く、しかも前へ緩やかに隆起する座面形状の為に尿道を強く押し付けてしまう状態になっていたのだと想像します。確証はないのですが、背骨か骨盤のどちらかが柔らかく、上体の疲れをごまかす為にサドル上でお尻の前後位置を動かせてしまう人には、もしかしたらAntaresは却って座りにくいサドルなのかもしれません。これにはTT長やハンドル高さも影響するでしょうから、一応Cervelo S3とCAAD10の両方で試してみました。CAAD10の方がTT長が5mm程短くハンドル高さも3mm低いのですが、どちらのフレームでもArioneで尿道に対する圧迫感を感じることは無く、Antaresでは圧迫の症状が出ました。このことから、私がAntaresで感じた着座スポットの狭さはフレームディメンションに起因するものではないと思われます。
というわけでArioneとAntaresで迷う方は多いと思われますが、サドル上でお尻を前後させ着座位置を細かく変える乗り方を好む方・細身のベースを好む方はArioneを、逆にお尻を殆ど動かさず長時間でも骨盤をしっかり起こしておける方はAntaresの方が快適かと思われます。幅もArione CXは最大135mmで前端から140mmの位置で60mm、対するAntaresはそれぞれ140mm、70mmとワイドなのも考慮すると良いでしょう。
価格評価→★★★★☆(コストパフォーマンスは高い)
評 価→★★★★★(私のお尻にはパーフェクトマッチ)
カタログ重量→ 169g (実測重量 179g)