購入価格 $399 + 送料$25 (
http://cycling.ciamillo.com/ から直販)
・実用になるパフォーマンスと圧倒的な軽さ
このキャリパーはシングルピボットとデュアルピボットの中間のような構造を持っています。左右のアームはセンターボルトのみで連結され、ワイアーハウジングが左アームを押し付け、小さなカムをインナーワイアーが引っ張り上げると梃子の要領で右アームを動かす構造になっています。mk-2さんが仰っているレバーを握りこんだ時に感じられるのカムの撓りは、カム自体の弱さではなくカムと右アームが接触する角度によってレバレッジが変化する構造に起因していると思われます。ともあれ、実感としてこのキャリパーを使用した際のレバータッチには幾許かの曖昧さがあります。これできちんとホイールロックするだけの制動力が伴わなければ出来の悪いシングルピボットブレーキと同じじゃないか、となるところですが、このキャリパーはきちんとブレーキレバーへの入力を漸進的にリムへ伝え、最終的にホイールロックに至るまで制御しやすく仕上がっています。0G-0xTiシリーズやNegative Gが軽量ブレーキとして成功したのは、絶対的な軽さだけではなくちゃんと止まれてしかもコントロールがしやすいこのカム構造があったからこそ。Shimano・カンパ・SRAM等コンポメーカーが採用するデュアルピボット構造と比較すると剛性感に欠けるとかアームの開きが狭いとかセンターがずれやすいとか色々細かいデメリットはあるけれど、シンプルでパーツ点数の少ない構造を利して圧倒的軽量に仕上がっています。100g超の軽量化と引き換えに少々のタッチと使い勝手の悪化を甘んじて受けられる人向けと言えるでしょうが、決して効かないブレーキではありません。私程度のホビーライダーが峠をカーボンディープで本気下りしても十分実用になる減速力がちゃんと備わっています。
レビューに当たって一部ボルトやナットに(主として趣味で)変更を加えていることを併記しておきます。例えば標準では前後ともにアルミ製バックナットが付属しますが、これはさすがに怖いのでチタン製に換えました。ワイアークランプボルトも元はステンレスですがチタンボルトに換えました。フロントセンターボルトはステンレス製でしたが、0G-07Tiから抜き取ったチタン製ボルトを流用しました。その結果、パッド別実測重量は168g、SwissStop Lightweight Race Pro 4ヶ33gとあわせて201gになっています。
・セットアップには根気と工夫が必要
0G-0x系と比べると大分簡単にはなりましたが、セットアップは相当面倒な部類です。左右のアームを繋ぐスプリングに使用されているワイアーは径が小さくレートが低いためレバーの引きは軽く感じられるものの、硬いワイアーハウジングと組み合わせたり長さが不適切な状態のまま使うとキャリパーアームが引っ張られたり押し付けられたりしてセンターが出ません。Shimanoやカンパ等の純正ハウジングを使う場合は、それこそミリ単位で調整しながらジャストレングスを探す必要があります。一度セットアップできてしまえば問題は出ないのですが、mk-2さんの仰るとおりNokonやI-linkのようなコンプレッションの無いケーブルハウジングを使えば圧倒的に楽なので、そちらを強く推奨します。また、アームの動きが渋い場合はセンターボルトとスプリングナットの締め付けに問題がある可能性があるので、13mmのオープンエンドスパナと5mmヘックスを用いて締め付けを調整すると改善できる場合があります。どうしてもダメな場合は一旦ばらして中のワッシャにテフロン系ドライルブでも差してみましょう。一応ホイール脱着を容易にするためにクイックリリースが付属していますが、これは気休めだと思っておきましょう。オープンにしてもアームは数ミリしか開いてくれません。パッドホルダー(カンパ10速互換)にはスタンダードとロープロファイルの2種があり、パッドとの組み合わせにもよりますが太いタイアやリムだと厳しい場合があります。例えばスタンダードのホルダーにSwissStop Race Pro(斜めに4本グルーブが入った肉厚タイプ)を組み合わせると、24mmタイアまでがエアを入れたまま脱着できる上限で、25mmやそれ以上になるとエアを一度抜かないと無理そうです。ZippやHED等幅23mmを超えるような幅広リムに使う場合はロープロファイルホルダーでないと完全に無理、21mmリムでも使用するシューによってはロープロでないと厳しい。それと、アジャスターバレル調整代が5mm程度しか確保されていないのもウェットでシューの減りが早い状況下では不便になるかもしれません。等々、軽量さと引き換えに使い勝手の面では色々とありがたくない制約を受けることになります。
・路上でのパフォーマンス
基本的な構造は0G-07TiでもGravitasでも同じ、アームの長さやカムのレバレッジが若干違うのでタッチや減速力の立ち上がり方に僅かに差異が見られますが基本的な使用感は共通しています。私はこのキャリパー以外にもカムにST-7900対策が施される前の0G-07Tiを使っていましたが、Negative Gの方がアームが肉厚でガタや撓りが少ない感じはするものの、どちらも思い切り力を入れて握るとワイアーが伸びているような、アームがたわんでいるような感触があります。しかし、路上ではアームのたわみを感じる程レバーを握りこむ前にホイールはロックしているので、特にストッピングパワーが足りないと感じたことはありません。35km/h位までで平坦路を流している場合はブラケット上からレバーに指をかけて握っても十分スピード制御できますが、初期制動は弱めなためパニックブレーキや峠を下る場合ではちゃんと下ハンからレバーを握る必要があります。
・新型カムは必要か?
ST-7900や6700はレバー比が見直されているため、2009年前半以前に製造されたモデルと組み合わせると制動力の立ち上がり方が急激になってしまう場合があるそうです。Ciamilloのキャリパーも最新モデルではレバレッジを見直した対策済みの新型カムが装着されていますが、旧モデルユーザーの為にもレトロフィット用カムが販売されています。カムの新旧見分け方はカムの外側からボルトとワッシャでワイアーを挟んでクランプするのが対策前のもので、カムに穴が開けられて上からワイアーを通してあるのが対策済みのカムです。直販で買ったユーザーにはフロント用を1個だけ無償で送ってくれるキャンペーンをやっていた(現在は終了)ので試しに0G-07Tiに装着してみましたが、確かにレバレッジが弱められているのが確認できました。しかしST-7900や6700と組み合わせる予定が無い方は新型カムに交換しても制動力不足を起こすだけのようなので、旧カムのままで良さそうです。GSLに標準付属の新型カムとSRAM Redのレバーを組み合わせても一切問題はないのですが…もしかしたらアームのジオメトリも変更されているのか、旧型にレトロフィットのカムを着けても対策済みキャリパーと全く同じにはならないのかもしれません。
・アフターサービス
基本的にオーナーのTed他数人で運営している小さなメーカーですが、直接コンタクトを取れば融通も利くし色々と面倒も見てくれます。痛んだキャリパーにアノダイズをかけなおしたりスプリングやボルトを交換するといったプログラムもあるようですし、前述のレトロフィットキット販売やカスタマイズへの対応などメジャーでは考えられないフットワークの軽さも備えています。頑張っているようですが小さなパーツメーカーは突然泡沫の如く消えていくことがままありますし、Ciamilloもいつ消えても不思議ではないのですが。
価格評価→★☆☆☆☆(調子に乗ってやりすぎた? まあいつものことです)
評 価→★★★★☆(機能的には必要十分、品質も高い)
年 式→2009
カタログ重量→ 140g + 53g (実測重量 139g + 62g、SwissStop Lightweight Race Pro 33g含む。純正装着パッドはKoolstop、実測24g)