購入価格 ¥31,500
ネットで画像を見て、自転車のパーツでは久々に一目惚れしたこのクランク。こいつはいずれ手に入れることになる、と直感した。大袈裟(笑)
それにしても、クランクアームの造形、チェーンリングの加工、グラフィック・・・・・・。どれをとっても美しい・・・・・・、美しすぎる。これでどうだ、と言わんばかりの自己主張の強いデザインだが、やりすぎ、でしゃばりすぎの半歩手前で寸止めという感じが憎らしい・・・・・・、憎らしすぎる。どこかのトレイルの白黒写真に、金色に輝くDEUSのロゴ。パッケージまでがトレイルライダーの心をくすぐってくる。いやらしい・・・・・・、いやらしすぎる。・・・・・・閑話休題。
【着脱】
まずは、装着に関して。BBはホローテックIIと同じエクスターナルタイプで、シマノのものと互換性があります。チェーンラインによって、左右のクランクアームにはめるスペーサー2枚を移動させますが、シマノとは逆で、左クランクに軸がついてくるタイプ。ドライブサイド(右側)に軸を持ってくるほうが、変速性能に影響がないように思うのですが、何か事情でもあるのでしょうか。メリットといえば、箱が薄いので、収納の際に邪魔にならないことくらいでしょうか。「箱なんか捨ててしまえ」、なんて言わないでくださいね(笑)
で、その軸をBBカップに通して、右クランクを8mmのアーレンキーで固定しておしまい。変速してみると、何の問題もありません。あっという間に出来上がりです。
クランクの取り外しについてですが、本国サイトには、「アーレンキーのみで外せる」とありますが、説明書には、「クランク抜き工具が必要」とあります。場合によって臨機応変に対応しろ、という大雑把な製品なのでしょうか(笑)
で、実際に試してみると、アーレンキーだけで事足りることもあれば、puller-cap(右クランクアームを取り外すためのキャップ)も共回りしてしまうので、TL-FC10と15が必要になることもありました。サイト、説明書両者ともに正解。やっぱり大雑把でした(笑)構造的には、クランク抜き工具は不要なはずのですが・・・・・・。おそらく、puller-capの工具の掛かる溝が浅すぎて、充分に締め切れないために、クランク固定ボルトを緩めると、共回りしてしまうのだと思われます。
【クランクアーム】
RACE FACE社伝統のI-BEAMデザインを踏襲しており、見たところ、先代モデルと変化はありません。いかにも強そうな外観ですが、実走してみての印象は、思ったより硬くないというところです。同じRACE FACEのDIABOLUSを貸してもらった時は、硬さという意味で存在が際立っていたのですが、こちらはなんとも希薄な感じです。希薄すぎて踏みごたえがない感じさえします。ひょっとしたら、剛性感に乏しいと言えるのかもしれません。ペダルワッシャーが付属していますが、Qファクターに影響が出るので、私は使用していません。
【BB】
先代の防塵性能が酷評されたためか、BBはリニューアルされています。回転はXTRの純正並みに渋いでのですが、いまのところ、トラブルはありません。また、XTRほどシェルの素材が硬くはないため、着脱の際に溝をなめないように注意が必要です。
【チェーンリング】
変速性能については、正直期待していませんでした。それどころか、先代のモデルはチェーンサック多発との情報もあり、戦々恐々としていたのです。しかし、実際にはチェーンサックは皆無で、驚いたことに、変速性能もXTR(FC-M960)に劣らないと感じられます。これは嬉しい誤算でした。昔のLXなんかは、「スカカチャ」、XTR、新型DEUSは「スカチャ」という感じ。「カ」1個分だけロスが少ないように感じるのです。チェーンリング裏のおそろしく複雑な切削加工(100% CNC)には、涙ぐましいまでの努力の跡がうかがえます。なお、このチェーンリングのみ、カナダ製のようです。
【シューズとの干渉】
そんなこんなで、当初はこれといった欠陥もなくおおむね満足していましたが、困った問題も出てきてしまいました。ビンディングシューズでは何ら問題ないのですが、トレッキングシューズとの相性が悪く、靴底と右クランクの付け根あたりが、ペダリング時に干渉してしまうのです。右クランクの中心部は、確かにXTRに比べて内側へのオフセット量が少ない形状になっていますし、靴底のほうは安定感を確保するため末広がりになっています。この組み合わせのせいで干渉してしまうわけです。
靴底の内側を数mm削ることでいちおうの解決は見ましたが、Qファクターが狭い人(ちなみに、クランクのQファクター自体はそれほど広い訳ではなく、XTRとほとんど同じでした)、そもそも靴のサイズが大きい人にとっては、致命的な欠陥になる可能性も排除できないでしょう。ご購入の際は、DEUSのクランクがついた完成車(最近多いです)を試乗するなど、確認されることをお勧めします。
デザインがあまりに好みなので半ば盲信的(猛進的?)に飛びついてしまいましたが、冷静に考えれば、危険な買い物だったのかもしれません。先代のモデルでは、さまざまなトラブルの報告がネット上にも散見されていたので、なおさらです。おそらく製品の信頼性や完成度としては、シマノのほうが高いのではないでしょうか。と言いつつも、DEUSにぞっこん惚れこんでいるので、自分の選択に後悔はないのですが。
価格評価→★★★☆☆(XTRとXTの間の価格ということで、こんなもんかと)
評 価→★★★★☆(恋している。あばたもえくぼ。でも、なんか不安)
年式→2010
カタログ重量→840g