購入価格 ¥6,500
ロングライド用のバイクを スラムREDで組むために購入しました。
ポテンツァ11という、2017年からラインナップに加わった新型コンポのブレーキです。
○ラインナップ上の立ち位置
カンパニョーロの2018年度 現行ラインナップは、上から順に
Super Record
Record
Chorus
Potenza11
Centaur
となり、アテナは廃版(アテナ トリプルも)、さらに10速ヴェローチェも廃版になりました。
ついでに 一応カタログの隅っこに地味に載っていた9/10速ゼノンも廃版です。
カンパニョーロジャパンに電話して尋ねたところ、9/10速系コンポは 基本的には流通在庫限りで終了、
10速に関しては スプロケットも在庫限りです。
ただ、9速チェーンとスプロケット、10速チェーンはまだカタログ落ちしてはおらず、
また 補修用のスモールパーツについては しばらく供給を続けるそうです。
スモールパーツには、たとえば スプロケットの歯の1枚単位での販売も含まれます。
なので、現在の9/10速ユーザーが すぐに不自由を感じる事はありません。安心しました。
要は、新たにカンパニョーロのコンポを使いたい場合 11速以外に選択肢はありませんよ、という話です。
ポテンツァ11は、アテナの後継モデルながら MADE IN TAIWANとなっており、
ボトムグレードのコンポによくあるコストダウンの標的にされています。
だからといって、コーラスのDスケルトンブレーキに比べて 明らかに性能で劣っているとは思いません。
アルミリムと組み合わせれば しっかり効きますし、
カーボンリム相手であっても 制動力が明らかに足りない!という事もありません。
○ブレーキシューの仕様
これは 2018年から復活したケンタウルも同じ事で、
ブレーキシューの脱落防止を シマノと同じ 小さなボルトでする様になりました。
メーカー側も、シマノ対応と公言している、らしいです。
カンパニョーロのブレーキは、元々 何の脱落防止機構もない「奥までしっかり押し込むだけ」というシューホルダー(以下フネ)を採用していました。
これについて、ある時 欧米のモンスターカスタマーから「抜け落ち防止が無いのは危険だ、何とかしろ」という意味不明なクレームが来たために
仕方なく 小型の板バネで留めるフネに仕様変更されました。
フネからシューが抜け落ちる状況といえば シューの前後を間違えた時くらいですから、
そういう めんどくさいクレームをつけてくる奴の頭のパーツが抜け落ちているだけなのですが、それはいいとして。
カンパニョーロ純正のアルミリム用シューは4個入り2,700円と シマノに比べて高価なので、
「カンパニョーロのキャリパーに シマノのフネを取り付けたらいいんじゃないか」という思考を生む罠になってしまいます。
右がポテンツァ11のフネ、左がジャグワイヤのフネです。
おわん型ワッシャーとボルトの形状、あと抜け落ち防止ねじの形式が異なりますが、
シマノキャリパー対応のフネなので シマノと同じとみなします。
見てわかる通り、カンパニョーロのフネは シュー固定ナット、
ジャグワイヤ(とシマノ)は シュー固定ボルト、という構造なので
キャリパーのアームに設けられているスリットの幅が違います。
上がカンパニョーロ、下がシマノです。スリットの幅が約1mm違い、カンパニョーロの方が広いです。
カンパニョーロのキャリパーにシマノのフネを取り付けた場合、前後に1mmの遊びが出来てしまいます。
もちろん ボルトを締め切れば遊びは無くなりますが、ちょっと怖いです。
僕も、かつては コーラスのキャリパーにシマノのBR-5800のフネを付けて使っていた事もありますが
やっぱり怖いので カンパニョーロのフネに戻しました。
上の画像、コーラスに ポテンツァ11の銀フネを付けているので、「純正」と呼ぶのは語弊があります。
この 自称シマノ対応のフネですが、シマノに対応しているとは思えません。
シマノのR55C3やR55C4、スイスストップのBXP Flashなど試しましたが 嵌め込みが非常にかたいです。
BXPは元々嵌めにくいシューなのですが、それを差し引いてもやっぱり嵌めにくい。
カンパニョーロ純正のシマノ対応シューは 当然すんなり入るので、シマノとは寸法が微妙に異なる様です。
唯一Black Prince Flashだけは 指で押しただけで すんなり入りましたが。
R55C4シューを使うと 費用的にはともかく作業的には面倒なので、このフネに最初から付属しているシューを買えたら助かるのですが、
ポテンツァ11自体は2017年から存在するのに、このシュー単体の供給が始まるのは2018年からです。
「BR-CE500」という品番で、今 検索してもヒットしません。待たせやがって・・・
もう少し待ちましょう。
○他社製ブレーキレバーとの互換性
このバイクは スラムREDで組んでいるので、スラムのレバーでカンパニョーロのブレーキを引く格好になりますが 性能上の問題はありません。
街乗り用のロードバイクは、カンパニョーロ ヴェローチェのエルゴパワーで コーラスのブレーキを引いていますが
それと遜色なく効きます。
REDの方がレバー剛性が高いので、ヴェローチェのレバーより効くくらいです。
スラムREDのダブルタップレバーの ブレーキレバーの支点から作用点(タイコ受け)までの距離は約24mm、
エルゴパワーも同じく約24mmです。
シマノの触角時代のSTIレバーも 同じく約24mmだったのに、
ST-7900と それ以降の非触角STIレバーは約36mmあります。
てこの原理で考えると分かりやすいですが、
支点から力点(ブレーキレバーを握るところ)までの距離と 乗り手の握力が一定だと仮定して、
支点から作用点までの距離が伸びると 作用点ができる仕事(ワイヤーを引く力)は弱くなり、
代わりに 作用点の移動量(ワイヤー引き量)が増えます。
これがシマノの新スーパーSLRの互換性問題を引き起こしていて、ワイヤーを引く力を意図的に弱めることで
社外品のキャリパー/カンチブレーキとの互換性を積極的に断つための細工です。
昔、STIレバーでミニVブレーキが引ける!と言われていたのは これが原因です。
現行のSTIレバーで旧レバー比のブレーキを引くと ほとんどブレーキが効きません。
当然、BR-7900以降のシマノブレーキは 新型STIの弱い引っ張り力でも
ちゃんとブレーキがかかるように設計されています。
逆に、BR-7900やBR-9000などのブレーキを 支点⇔作用点間距離24mmのレバーで引くと、
シュータッチ以降 急激に制動力が上昇する、いわば「カックンブレーキ」の様な コントロール性に欠けたものとなるでしょう。
実際に検証して確かめたわけではないですが、合いもしないブレーキに費やすお金も手間も無いので
ひとまず様子見として ポテンツァ11のブレーキを買った次第です。
カンパニョーロのブレーキなら、グレードの違いによる制動力の差は あんまり無い、というのは先ほど書いた通りです。
○小話
カンパニョーロジャパンが発行している、2018年度版のカタログです。
2017年度版も持っていますが、撮り忘れました。
ポテンツァ11は、「ポテンツァ11」が正式名称で「ポテンツァ」は誤表記になります。
これは、ブリヂストンタイヤのブランドである「ポテンザ」との商標避け対策で、
「EDGE」が「ENVE」に改称したのも GARMIN社との商標問題があったからだと言われています。
が、このブレーキには「11」の表記がありません。
箱にも書いてありません。
上から2枚目の画像にも、やっぱり「Potenza11」とは書かれていません。
このブレーキは おそらく「ポテンツァ」の初期ロットです。
思うに、ポテンザとの商標がらみの問題が発覚したのは「ポテンツァ」リリース後だったのではないでしょうか。
ブリヂストン社と いろいろあった結果、「ポテンツァ11」として再リリースしたものの
世に出た「ポテンツァ」を回収する事は出来なかった、のだと予想します。
そう考えると、「Potenza」表記のこいつは ちょっとした珍品なのかもしれません。
○その他 注意事項
カンパニョーロのブレーキですが、キャリパーにはクイックが付いていません。
ホイールを脱着する際には、エルゴパワー側で ブレーキレバーを跳ね上げる必要があります。
パカッと開きます。
どうでもいい事ですが、DE R○SAのカンパニョーロ完成車は、カタログ掲載用写真の撮影時に
ブレーキのクイックが開きっぱなしになっている確立が何故か高いです。
そこ以外のカタログでは あんまり見ないので、撮影班が無頓着なのでしょう。
スラムやシマノのブレーキクイックは キャリパー側に配されているので、
ダブルタップや旧STIレバーにカンパニョーロのブレーキを組み合わせると
クイックがどこにも無い状態になってしまいます。
僕のバイクは、前輪21Cか23C、後輪19Cのタイヤがデフォルトなので問題ありませんが
ナローリムにワイドタイヤなど履かせている人は気を付けた方がいいですね。
ホイールを外すたびにタイヤの空気を抜く破目になるので。
○まとめ
所有欲が満たされるコンポでは無いですね(笑)。そういうのがほしい人はスーパーレコードをどうぞ。
性能面では特に不満も無い、良いブレーキだと思います。
コーラスと付け変えて 使い比べもしましたが よく分からなかったので、この辺りの差別化はされていないのかもしれません。
数年前、アテナのスケルトンブレーキを買おうとしたら
前後セットで2万円近くもして買い控えた事があったので、
それと同グレードのブレーキが定価7,900円で買えるようになったのは本当に嬉しい。
仕上げや形状は ちょっと変わりましたが・・・。
「カンパは高い」という固定観念を、ポテンツァ11は ちょっとずつ壊しています。
価格評価→★★★★★
評 価→★★★★★
年式→2017