購入価格: ¥32,737 (税込)
標準価格: ¥44,194 (税込)
『特異な形状のおかげで小さな手でも握りやすく、ブレーキも変速もレバーの操作性は抜群』
■ ST-RS505とは
「SHIMANO ST-RS505」は、ロード用油圧式ディスクブレーキに対応したデュアルコントロールレバーだ。グループ外コンポーネントだが、105グレードに相当する。同グレードのディスクブレーキキャリパー BR-RS505はフラットマウントタイプだが、ポストマウントタイプのBR-RS785とも互換性を持つ。
上位グレードであるST-R785やST-RS685と同様に、サーボウェーブ・アクションやフリーストローク調整も搭載されている。ただし、シフトインナーケーブルはポリマーコーディングではなく、新たにOPTISLICKが採用されている。また、新しい試みとして、ST-RS685とは異なる変速ユニットとリザーバータンクのレイアウトをとっており、これが独特のレバー形状にも現われている。
左右セットならシフトケーブル、ブレーキホースの他に、ミネラルオイルが2本付属する。ただし、「TL-BT03 ディスクブレーキ ブリーディングキット」は別途購入する必要がある。これとブレーキキャリパーがあれば、機械式ディスクブレーキの完成車を油圧化できる。
SHIMANO ST-RS505
■ 購入のきっかけ
もともと油圧式ディスクブレーキには憧れていたが、GIANT DEFY1 DISCに付属する機械式ディスクブレーキ TRP SPYRE-Cのレバーの引きが重たいと感じたため、当初の予定よりも早く導入することにした。
105グレードのST-RS505に決めた理由は、DEFY1 DISCの105 5800シリーズに合わせたかったというだけでなく、特異なレバーの形状に強く惹かれたからだ。これならST-5800よりも見た目の個性を強く出せるのではないかと考えた。約3カ月半使用したレビューは以下のとおり。
GIANT DEFY1 DISCは、ST-5800でTRP SPYRE-Cを操作する
■ ブリーディングの作業 ※レバー側の注意点
ST-RS505のブラケットをめくり、ブリードネジを外した後にじょうご(ファンネル)を取り付けることで、ブリーディングができるようになる。ST-RS505はレバーを45度傾けて作業するため、じょうごが完全に空になっていなくても、液面が穴よりも下がって気泡が入ることがある。こうなると、ブリーディングを最小からやり直さなければならない。
途中、レバーを握ったまま、ブリードスクリューを解放するという作業がある。レバーを結束バンド等で固定すれば、ひとりでもできるが、実際には誰かにレバーを握るのを手伝ってもらった方が効率よく作業できる。
気泡がしっかりと抜けていれば、カチッとしたレバーの当たりが出る。逆に気泡が抜け切れていないと、レバーがスカスカした動きになる。このときのレバーの感触は、今後の正常なブレーキ操作ができているかどうかを判断するためにも覚えておいた方がいい。
ブリードネジを締め付ける際は、じょうごにオイルストッパーを浅く挿入して栓をすれば、ミネラルオイルが溢れる量が多くなり、リザーバータンク内に気泡が残りにくい。溢れたオイルはイソプロピルアルコールで拭き取れば、オイルのヌルヌルが完全に取れる。
なお、左右のブレーキのブリーディングが終わるまで、握り幅調整やフリーストローク調整は行わない方がよい。というのは、レバーの空引き量が大きいのか、気泡が混入してレバーがスカスカなのかが判断しにくくなるからだ。
ミネラルオイルの液面をある程度保つのがコツ
■ デザイン
ロードの油圧用のデュアルコントロールレバー(SRAMならダブルタップレバー)は、上下に長い形状のものが多い。これは従来の形状を踏襲し、変速ユニットの上にリザーバータンクをレイアウトしたからだ。ST-RS505は変速ユニットを前方に、リザーバータンクを後方にレイアウトすることで前後に長い形状になった。このことに加えて、どこか有機的な感じのデザインがますます固定を強くしている。
ST-5800を取り付けたDEFY1 DISCは、ディスクブレーキを搭載してはいるが、ロードバイク然とした外観だった。これがST-RS505に交換するだけで、見た目のクセが一気に強くなる。いかにも油圧式というかディスクロードといった雰囲気がたまらない。ハンドル形状や取り付け角度にもよるが、ディスクロードであれば意外に見た目の違和感は少ないと思う。
■ ブラケットの握りやすさ
ST-RS505は特異な形状にすることによって、ブラケットをコンパクトで握りやすい太さに仕上げている。それでもST-5800よりひとまわり太いが、握った感じはST-5800とさほど変わらない。「意外に普通の握りごこち」というのが第一印象。エルゴノミックな形状で実際よりも細く感じさせており、手が小さな私でも全く無理なく握れる。
適度なブラケットの太さは荷重を分散させ、長距離走行でも手のひらが痛くなりにくい。ブラケットの先端を持てば、低い前傾姿勢をとることも可能。また、握り幅の調整にもよるが、ST-RS505はレバーの付け根が前方にあるため、ST-5800よりも指3本がブラケットの下に入りやすい。個人的には、ST-5800よりも握りやすいと感じている。
あるショップで店員と話が盛り上がった際に、お願いして完成車のST-R785とST-RS685を握らせてもらう機会があった。ST-R785のブラケットは太めだが、電動変速の省スペースが効いているのか、手が小さくても一応は握れる。ST-RS685のブラケットは横幅は細いが、上下に厚みがあるという印象で、私が握るとST-RS505よりもやや大きめに感じた。実走したわけではないので、これはあくまで参考まで。
ST-5800よりも先端がやや太めだが、握った感覚はあまり変わらない(左)
レバーの付け根が前方にあるので、ブラケットの下部に指を入れやすい(右)
■ 制動力とコントロール性
ST-RS505、BR-RS785、SM-RT81を組み合わせて使うと、軽いレバーの引きでもしっかりとブレーキが効く上、繊細なスピードコントロールもできる。ブレーキ性能にはディスクブレーキキャリパーのBR-RS785だけでなく、ST-RS505も大きく関係する。特に以下の二点の影響が大きいと考えられる。
●サーボウェーブ・アクション
テコの原理を利用した技術。レバー(力点)を握るほどに、ピストンを押すロッドの接続部(作用点)がレバー軸(支点)に近づくようにできている。パッドがローターに当たるまでは、レバーの入力に対してパッドが大きく(素早く)動く。パッドがローターに接触してからは、小さな力で大きな制動力を発揮できる。しかも、パッドの移動量も小さい(ゆっくり動く)ので、繊細なコントロールも可能になる。
●ブレーキホースの剛性
シマノのスペックハンドブックによると、MTB用のディスクブレーキには高剛性のブレーキホースが付属する。一方、ST-RS505に付属するSM-BH59-JK-SSの剛性は”スタンダード”となっている。ブレーキホースの剛性を落として制動力を下げることにより、コントロールしやすいロード用のブレーキにしているようだ。
なお、ロード用のST-R785には、SM-BH90-SBという高剛性のブレーキホースが採用されていたことがあり、とあるショップのブログでは「ガツンと効く」とインプレされていた。メーカーもこのホースでは効きすぎると感じたのか、現在はスタンダードな剛性のSM-BH59-JK-SSに変更されている。このことから、ブレーキ操作時の挙動が変わるので、安易に他のブレーキホースに交換するのはやめた方がよさそうだ。
付属するブレーキホースはMTB用の高剛性なものではない
■ 引きの軽さとブレーキタッチ
「あれ? 思ったよりも引きが軽くないな」というのが第一印象。実はST-RS505はST-5800よりもレバーのバネ力がやや強めになっており、ブラケットから指1本でブレーキ操作するのは、私の握力ではちょっときつい。指2本ならレバーの引きが断然軽くなるが、それでもレバーの握り始めはキャリパーブレーキやVブレーキの操作とほぼ同じくらいだ。
レバーの握りはじめこそ絶対的な軽さはないが、レバーを握り込んでからの引きの軽さは他のブレーキとは段違い。ST-RS505なら小さな握力で大きな制動力を発揮できるので、下り坂や急制動でも手が痛くならないし、長距離走行でも手が疲れずに快適だ。指1本での操作は無理でも、レバーを握り込んでからのことを考慮すれば、ST-RS505のレバーの引きは非常に軽いといえる。
当然、ケーブルの繊維のザラつきやブレーキキャリパーのリターンスプリングのバネ力とも無縁。滑らかな極上のブレーキタッチは、油圧ならではのものだ。特にリアブレーキは油圧式の恩恵が大きく、ブレーキホースが長くなっても、ケーブル引きのブレーキのようにフリクションが増大して引きが重くならない。このことによって、左右のレバーの引きの軽さはほぼ同じになる。
比較対象のTRP SPYRE-Cは、デュアルピストン式だけあってタッチは良好
■ 握り幅調整とフリーストローク調整
以下の2つの機能を使うことで、レバーの操作感を自分の好みにセッティングできる。
●握り幅調整
レバーの初期位置を変化させる機能。レバーの位置を手前にすることで、手が小さくても無理なくレバーを引ける。調整幅はST-5800と同じ10mmだが、ST-RS505はレバーの付け根が前方にあるので、握り幅を小さくした状態でも、引いたレバーが中指や小指に当たりにくい。
レバーを引いた状態で保つことで握り幅を小さくしていると思われるが、レバーのリターンスプリングが縮まっても引きの重さにはほとんど影響しない。ちなみに、ST-5800で握り幅を小さくすると、ケーブルのテンションが高まったり、TRP SPYRE-Cのリターンスプリングが縮まって、レバーの引きが重くなることがあった。
●フリーストローク調整
レバーの空引き量を調整できる機能。レバーの初期位置からパッドがローターに接触するまでの距離を変えられる。調整幅は8mmと油圧用のデュアルコントトールレバーの中では最大。なお、機械式のTRP SPYRE-Cのようにパッドクリアランスを変化させることは一切できない。
調整ナットはメインレバーを操作しないと露出しない上、奥まった位置にあるので、手探りでアーレンキーを挿入しなければならない。ポールポイントレンチでは調整ナットへのかかりが悪く、おそらく無理に回すと調整ナットを舐める。作業性の悪さはちょっと残念。
デフォルトでは調整幅がゼロなので、レバーを引くとすぐにパッドがローターに接触する。これではちょっと空引き量が小さいと感じたので、キャリパーブレーキの操作感に近づくようにわずかに大きくしている。また、このブレーキは急激に制動力が立ち上がるわけではないので、フリーストローク量が小さくてもコントロール性にはほとんど影響しない。なくても問題ないが、あれば便利な機能だ。
フリーストローク調整での作業製の悪さが残念
■ 変速操作
ST-RS505の独特な形状とブレーキ操作ばかりに気を取られていたが、変速操作においてもST-5800を大きく上回っている。メーカーが価格相応の変速操作にしてくれたといったところだろうか。とにかく、これはうれしいサプライズだ。
●レバーの操作感
ST-RS505は、ST-5800よりも変速操作におけるレバーの遊びがかなり小さくなった。レバーのストロークが小さくなると、ストレスなく素早い変速操作にも対応でき、ロードバイクでの走行が断然楽しくなる。
フロントのシフトアップでは、メインレバーを手首で返すことなく、2本の指だけで無理なくメインレバーを内側に倒せるようになった。レバーの遊びの小ささは、トリム操作でも感じられる。頻繁に変速操作を行うリア側は特に恩恵が大きく、ST-5800の「カッコン、カッコン」というワンテンポ遅れた感じから、「カチッ、カチッ」という小気味よいクリック感になった。
ST-5800よりもレバーの遊びが小さくなった ※画像は右レバー
●OPTISLICKシフトインナーケーブル
2016年モデルの105やDEORE XT以下に採用されるインナーケーブル。以前は105もポリマーコーティングシフトインナーケーブルだったので、使う前はダウングレードを残念に感じていた。
実際に使ってみると、非常に軽い操作感。アウターケーブルが他社製なら、ポリマーコーティングとほぼ同様の引きの軽さ。皮膜が固くて剥がれにくいので、耐久性ではOPTISLICKの圧勝だ。初期伸びも小さく、3カ月半の使用ではアジャスターによる微調整くらいで済んだ。
OPTISLICKは緑がかった皮膜で、硬くてスベスベとしている
■ 総評
ST-RS505は制動力・コントロール性・握力の小ささに大きく貢献し、下り坂や急制動、長距離走行等、シチュエーションを選ぶことなく楽にブレーキ操作ができるようになる。ブレーキに関しては、上位のレバーと同じ機能を備えており、105グレードであっても抜かりはない。
変速ユニットとリザーバータンクの新しいレイアウトは効果的で、レバー形状は好みが分かれるところだが、手の小さな私でもST-5800とほぼ同様にレバーを握れる。変速時のレバーのストロークも小さく、OPTISLICKシフトインナーケーブルと相まって、軽くて素早い変速が可能だ。
導入のネックになるのは価格の高さ。105グレードにもかかわらず、ST-RS505は定価が4万円を超える。だが、これは価格に見合った性能であり、ST-5800と比べると同じ105グレードとは到底思えない。まさにグレードを超えた操作感だと思う。機械式ディスクブレーキを搭載した完成車なら、ST-RS505を選べば大幅にアップグレードできるはず。見た目が気にならないならオススメのパーツだ。
ST-RS505を取り付けたGIANT DEFY1 DISC
価格評価→★★☆☆☆ (セール価格で買えたがやはり高価。性能は納得)
評 価→★★★★★ (素晴らしい操作性。見た目も私の好み)
<オプション>
年 式→2016年
カタログ重量→655.3g (1ペア)